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「トリプル危機」を無視する選良たち

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安倍晋三元首相が指摘したように「台湾有事は日本有事」に直結し、岸田文雄首相が述べたように「今日のウクライナは明日の東アジア」になり得る。日本はロシアの侵略戦争、中国の台湾恫どう喝、北朝鮮のミサイル乱射のトリプル危機の最前線にある。日本は総力を上げて戦争を抑止しなければならない緊急事態を迎えている。ところが国会の選良たちは、国内スキャンダルの泥仕合に明け暮れて、国家や国民を守る気概もない。

 

軍事演習を視察するロシアのプーチン大統領=9月6日(AP)

 

早まる?台湾侵攻の時期

 

わが列島の周囲を見渡せば、地政学上の過酷な環境に置かれていることが分かる。ロシアに侵略されたウクライナは、米欧の結束と支援がなければ、とっくに政権が崩壊していたはずだ。もしもロシアがこの戦争に勝てば、中国の習近平国家主席の台湾侵略のお膳立てをすることになる。戦争の局面が変化したのは、米欧からウクライナに供与された高性能兵器によるところが大きい。プーチン体制の終わりがささやかれ、クーデターがあり得るという説さえ飛び交う。その過程でどんな不測の事態が起きるのか予測できず、日本も北の守りを固めなければならない。

 

triple threat

中国中央テレビが8月4日に「微信」の公式アカウントに投稿したミサイル発射の映像(共同)

 

他方、習政権は「制限なし」の友情で結ばれた同じ独裁国家のロシアを失えば、米軍を「欧州正面」に引き付けられなくなり、「アジア正面」で米中新冷戦を単独で戦わなければならない。習政権にとって、ロシアが「米国支配の世界秩序」を変えるための重要なパートナーであることに変わりはない。習氏は先週の第20回中国共産党大会の政治報告で、台湾問題では「決して武力の行使を放棄しない」と述べて、前回大会では触れなかった武力行使に言及した。

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台湾侵攻の時期をめぐっては、米インド太平洋軍のデービッドソン前司令官が、2027年までにその脅威が顕在化する可能性を示していた。しかし、ブリンケン米国務長官は最近、「中国はずっと早い時期の統一を追求する決断をした」と、時期が早まる可能性に言及した。続いて、ギルデイ海軍作戦部長も、「2022年あるいは23年の(侵攻)可能性を考慮しなければならない。私はそれを排除できない」と警戒感を示している。

 

 

あきれた国会審議

 

ところが、日本の国会はそうした危機感を国民と共有していない。それは、衆参両院の予算委員会で先週4日間行われた質疑を見れば明らかだろう。読売新聞の集計によると、計28時間の質疑のうち、最も多くの時間が割かれたのは旧統一教会をめぐる問題で、7時間20分だった。次いで物価高など経済対策が6時間30分、そして外交・安全保障はわずか2時間20分というありさまだ。

 

Speaking Out

衆院予算委で「反撃能力」の保有への決意を求める自民党・萩生田光一政調会長=10月17日午前、国会・衆院第1委員室(矢島康弘撮影)

 

予算委質疑では、自民党の萩生田光一政調会長が、日本へのミサイル発射を抑止する「反撃能力」の保有への決意を求めたぐらいで、野党を巻き込んだ危機対処の議論が起こらない。大局を見ることができないのは、周りを敵兵に囲まれながら、塹壕の中で賭け事に禁じ手を使ったかどうかでもめている兵士のようではないか。

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筆者:湯浅博(国基研企画委員兼主任研究員)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第977回(2022年10月24日)を転載しています。

 

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