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北の発射台表彰と反撃能力

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tactical nuclear weapons
新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星砲17」型を娘と共に視察する金正恩朝鮮労働党総書記=2022年11月18日、平壌国際空港(朝鮮通信=ロイター)

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朝鮮半島情勢に詳しい拉致被害者「救う会」の西岡力会長に、北朝鮮をめぐる珍ニュースを教えられた。北朝鮮の最高人民会議常任委員会が、人間ではなくミサイルの移動式発射台に対し、英雄称号と勲章を授与したのだという。素っ頓狂な冗談かと思ったら、国営通信社、朝鮮中央通信が11月27日付で実際にこう報じたのだそうである。

 

「常任委員会は、米帝の核覇権に立ち向かえる名実相伴う核強国であることを世界に明白に実証し、最強の大陸間弾道ミサイルの威容を全世界にとどろかせた新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星砲-17』型の発射台車第321号に、朝鮮民主主義人民共和国英雄称号とともに、金星メダルおよび国旗勲章第1級を授与した」

 

「地球上で帝国主義の暴政を終わらせる絶対的な力を持った社会主義朝鮮の気概を全世界に力強く誇示した歴史的壮挙であり、5千年の民族史に末永く輝く特大出来事である」

 

tactical nuclear weapons

新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」発射の関係者らと写真に納まる北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(左から7人目)と娘(同6人目)(朝鮮通信=ロイター)

 

西岡氏が得た情報では、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記はこの発射台を200台作るよう命令しており、国産できない大型タイヤを中国から密輸しているという。

 

米国全域を射程に収める「火星17」の11月18日の発射成功がよほどうれしかったのだろうが、開発者でもなく発射台を英雄扱いし、勲章を与えても仕方あるまいに…。そう思っていたところ、西岡氏はこう背景を解説した。

 

「それだけ北は日本や韓国の敵基地攻撃能力(反撃能力)を気にしている。だから移動式発射台が、火星17発射時の強い衝撃に耐えたことに喜んでいる」

 

なるほど相手領域内でミサイル発射を阻止する反撃能力に関して日本では現在、自民、公明両与党が能力行使のタイミングなどをめぐって協議中である。

 

北朝鮮の反応をみると、北朝鮮や中国にとって日本が反撃能力を保有することは好ましくない事態なのだろう。つまり、それだけ抑止力を高める効果があるということになる。自公両党にはぜひ、あらゆる事態に臨機応変に対応できる方向性を打ち出してほしい。

 

折しも米国防総省が11月29日に発表した中国の軍事動向に関する年次報告書は、中国が2035年までに約1500発の核弾頭を保有する可能性があるとの分析を示した。

 

ICBM Launch Pad

3月24日に行われた新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験。25日付の北朝鮮の労働新聞が掲載した=平壌(コリアメディア提供・共同)

 

中国や北朝鮮が弾道ミサイルを質量ともに拡充している中で、弾道ミサイル防衛(BMD)による迎撃には限界があるのは火を見るよりも明らかである。核弾頭を積んでいない通常弾でも、着弾した場所によっては大きな人的・物的被害が生じるのは間違いない。

 

令和2年6月15日、当時の河野太郎防衛相が唐突に陸上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画停止を発表した2日後の17日、安倍晋三首相(当時)は筆者に語った。

 

「イージス・アショアがこうなったから、自衛隊の打撃力(敵基地攻撃能力=反撃能力)保有について、正面から議論しようと思っている。明日18日の記者会見で、国家の安全について徹底的に議論していく考えを述べようと思う」

 

公明党はまだ「専守防衛の基本的な考えからも、国民の理解を得られるとは思っていない」(当時の斉藤鉄夫幹事長)と反撃能力保有を否定していた時代だった。

 

あれから2年半近くたち、極東地域はまるで火薬庫の様相を呈してきた。安倍氏の問題提起は、いつも物事がぎりぎり間に合うラインで行われてきたのだと感じる。

 

筆者:阿比留瑠比(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

 

2022年12月1日付産経新聞【阿比留瑠比の極言御免】を転載しています

 

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