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NATO前事務総長インタビュー:中国の台湾侵攻抑止で日本の役割「極めて重い」

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ウクライナの首都キーウ近郊ボロディアンカに残る破壊された集合住宅。ロシアの侵攻開始から間もなく1年だが、空襲警報や停電が続く中での厳しい生活には終わりが見えない=2月10日(川口良介撮影)

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北大西洋条約機構(NATO)のアナス・フォー・ラスムセン前事務総長が、産経新聞のインタビューに応じた。ロシアのウクライナ侵略について「早期終結には、ウクライナが求める武器をすべて供与するのが最善策」と述べ、戦闘機提供を排除すべきでないと主張。ロシアの侵略容認は、中国の台湾侵攻を誘発すると警告し、先進7カ国(G7)議長国・日本の役割は「極めて重い」と訴えた。

 

NATO

インタビューに答えるNATOのラスムセン前事務総長

 

ラスムセン氏は2014年、NATO事務総長として、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島併合を目の当たりにした。「あの時、西側がロシアにもっと強硬姿勢を示さなかったのは誤りだった」と振り返った。

 

そのうえで、「ロシア軍がクリミアにいる限り、紛争は終わらない。侵攻を受け入れれば、プーチン露大統領はモルドバ、ジョージア、バルト三国へと標的を広げる」と述べ、クリミア奪回を目指すウクライナ政府を支持した。

 

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1月、ロシア軍のミサイルが着弾し多くの住人が犠牲になったドニプロの高層住宅=2月18日午後、ウクライナ東部ドニエプロペトロフスク州(川口良介撮影)

 

ラスムセン氏は昨年9月、ウクライナのイエルマーク大統領府長官とともに、同国の安全保障をめぐる提案をゼレンスキー大統領に提出。日本を「パートナー」国と位置付けた。

 

提案について、「日本は非軍事部門の支援で、強い興味を示してくれた」と謝意を示し、経済制裁などで協力を訴えた。G7広島サミットについては、「ロシアの核兵器使用は許さないというメッセージを発信する場になる。長期的なウクライナ復興支援を表明すれば、民間投資も呼び込める」と期待感を示した。

 

ラスムセン氏は1月、台湾を訪問しており、「プーチン氏のクリミア併合を容認すれば、中国の習近平国家主席は台湾をのみ込めると結論付ける」と分析。「われわれはプーチン氏に対して(14年に)犯した過ちを繰り返してはならない。『台湾侵攻は非常に高い代償を伴う』と強い姿勢を示すことが、中国の攻撃抑止につながる」と訴え、日本の防衛力増強を歓迎した。NATOは米国、フランス、カナダなどの太平洋国家を抱えており、サイバー防衛などで協力が可能だと述べた。

 

Taiwan Porcupine Strategy CSIS

台湾南西部・嘉義県の基地で訓練を視察する蔡英文総統(中央)=1月6日(総統府提供・共同)

 

ラスムセン氏はまた、中国に対抗し、アジアで日米豪印4カ国(クアッド)など多国間協力の枠組みが作られていることを歓迎した。特に、インドの重要性を強調。「インドは中国との紛争で、ロシアからの武器調達に頼ってきた。ロシアに代わってインドを支える仕組みが必要」と述べ、日本がインドと経済関係を強めることに期待を示した。

 

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ラスムセン前事務総長の発言要旨は次の通り。

 

 

■戦闘機供与

 

ウクライナへの軍事支援では、すべての選択肢を排除すべきではない。「これは供与できない」と示せば、ロシアに戦略の余地を与え、紛争を激化させる。早期終結には、ウクライナに必要な武器をすべて与えることが最善策だ。

 

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■クリミア奪回

 

クリミア半島はウクライナの領土。奪回が現実的かどうかは別として、彼らがロシア軍を追い出そうとすることを責められない。クリミアにロシア軍がいる限り、紛争は続く。

 

2014年にロシアがクリミアを併合したとき、われわれ西側は大きな間違いをした。決然と強硬姿勢をとれば、今回のウクライナ侵攻は避けられただろう。

 

■日本の役割

 

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ウクライナのイエルマーク大統領府長官と昨年9月、安全保障の枠組み構想を作成した際、日本は非軍事協力に興味を示した。日本は憲法で軍事支援に制約がある。延々と憲法改正論をしなくても、対ロシア経済制裁などで協力できる。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で、ロシアの核兵器使用に対抗するメッセージを発信してほしい。ウクライナ復興への長期的支援を表明すれば、民間投資も呼び込める。

 

■ウクライナと台湾

 

もし、われわれがクリミア半島奪回をあきらめたら、中国の習近平国家主席は台湾を手に入れられると思うだろう。プーチン露大統領に対して犯した過ちを繰り返してはならない。中国に「台湾侵攻は高い代償を伴う」と示すことが、台湾に対する攻撃抑止になる。アジアにはNATOのような軍事同盟はないが、日米豪印4カ国(クアッド)など多国間協力の枠組みができたことを歓迎する。特にクアッドにインドを入れたことは重要だ。インドを民主主義圏に引き込まねばならない。日本の国防増強も必要だ。

 

■プーチン氏との出会い

 

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私がデンマーク首相として02年、プーチン大統領と初めて会ったとき、彼はロシアと西側との関係構築に熱心だった。ロシアのNATO加盟意欲をほのめかすほどだった。05年、親欧米派が親露派から政権を奪うオレンジ革命がウクライナに起きたのを機に変わった。米国が背後にいてロシア排除を画策していると考え、ジョージアに侵攻し、クリミア半島を併合した。結局、ロシアの国益を損ねた。

 

聞き手:三井美奈(産経新聞パリ支局長)

 

 

アナス・フォー・ラスムセン 1953年生まれ。デンマークで経済相を経て、2001年に首相就任。09~14年にNATO事務総長を務めた。昨年9月、ウクライナのイエルマーク大統領府長官と共同で同国の安全保障構想をまとめ、ゼレンスキー大統領に提出した。

 

 

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