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「人道支援てこに拉致被害者救出」方針を米は理解

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5月3日、ワシントンで拉致被害者の家族、拉致議連メンバーらと面会するシャーマン米国務副長官(左から4人目)=米国務省提供

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5月初め、北朝鮮拉致被害者の「家族会」、支援組織「救う会」、超党派の「拉致議連」の訪米が4年ぶりに行われ、筆者も「救う会」会長として参加した。「親世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の一括帰国が実現するなら、我が国が北朝鮮に人道支援を行うことに反対しない」とする家族会と救う会の新運動方針への理解と支援を求めるのが訪米の主目的だった。その目的は達成されたと考えている。

 

 

「二つの人道問題」の同時解決を模索

 

拉致問題をめぐっては、2019年2月、トランプ米大統領が北朝鮮最高指導者の金正恩氏に、問題解決のための安倍晋三首相のメッセージを直接伝え、金正恩氏は前向きな回答をしていた(2019年5月の私たちの訪米でトランプ政権幹部から聞いた)。しかし、米朝首脳間の核廃棄協議が決裂したので、拉致問題は動かなかった。

 

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その後、バイデン米政権の下で米朝間の対話は完全に閉ざされ、金正恩政権は核ミサイルの実戦配備と核攻撃演習を繰り返している。従って、米朝核協議で拉致問題も議題にして一緒に解決するという安倍、トランプ両氏の戦略は成り立たない。

 

tactical nuclear weapons

新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星砲17」型を娘と共に視察する金正恩朝鮮労働党総書記=2022年11月18日、平壌国際空港(朝鮮通信=ロイター)

 

一方、北朝鮮は厳しい経済制裁と新型コロナまん延による国境閉鎖などにより、深刻な食糧難に直面し、昨秋以降、中国に大量の食糧支援を要請したが断られている。

 

以上のような状況を踏まえ、家族会と救う会は2月に新運動方針を決めた。日本政府認定の拉致被害者だけでなく全拉致被害者の一括帰国という「時間的制約のある人道問題」と、北朝鮮の食糧難という人道問題を共に解決しようと金正恩政権に呼び掛けたものだ。

 

米朝核協議が開かれない中、我が国が北朝鮮と接触することに米国が反対するかもしれないと金正恩政権が判断すれば、新運動方針は機能しない。また、人道支援は国連制裁違反ではないが、これまで拉致問題解決に多大な支援をしてくれた米国にこの運動方針を説明し、理解と支援を求めることは欠かせない。

 

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5月3日、ワシントンでシャーマン米国務副長官(左から3人目)と面会した拉致被害者の家族や支援組織「救う会」、拉致議連のメンバー(右列)=米国務省提供

 

国務副長官「全力で支援する」

 

米政府では、国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官、国務省のシャーマン副長官、北朝鮮担当の次官補、人権担当の次官補代理、財務省のネルソン次官らが、新運動方針の説明に耳を傾け、理解を示してくれた。シャーマン副長官は拉致被害者救出運動のシンボル「ブルーリボンバッジ」を着けて訪米団との面会に臨み、「できることは全て行って支援する」と語った。

 

議会では、いずれも共和党のサリバン上院議員、クルーズ上院議員、ハガティ上院議員(前駐日大使)、ブション下院議員らがやはり理解と支援を表明してくれた。

 

この他、民間の北朝鮮専門家とも意見を交換した。ある専門家は「日本は自国民の拉致という人権問題を抱えているので、世界一厳しい制裁を北朝鮮に科しており、全拉致被害者が帰還した場合に、国際制裁より厳しい部分を解除することは、世界中のどの国もまたどの人権活動家も反対しないだろう」と述べて、新運動方針への支持を表明した。

 

筆者:西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)

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国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第1037回(2023年5月8日)を転載しています

 

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