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【主張】IPEF初の合意 対中依存脱却につなげよ

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米デトロイトで開かれたIPEFの閣僚会合=5月27日(共同)

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日米韓やインド、東南アジア諸国など14カ国による「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会合で、重要物資のサプライチェーン(供給網)を強化する協定を結ぶことが決まった。

 

IPEFは、中国とは異なる自由で公正な経済圏を目指す構想である。米国が主導し、日本も後押しして昨年5月に発足した後、初めてとなる具体的な成果だ。

 

半導体や重要鉱物などの供給が途絶するリスクに備え、新設の協議会で各国にとっての重要物資を特定して調達先を多角化する。危機時には相互に融通する協力体制を構築するという合意だ。

 

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新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵略で世界が直面したのは供給網の脆弱(ぜいじゃく)性である。今回の協定はその改善に資するだけでなく、経済安全保障の観点でも重要な意味を持つ。

 

IPEFの閣僚会合に出席した西村経産相(中央)=5月27日、米デトロイト(共同)

 

念頭にあるのは、輸出制限などの手段で他国への影響力を行使する中国の経済的威圧だ。例えばハイテク製品に欠かせないレアアース(希土類)は中国が外交上の武器とする物資の代表格である。生産大国である中国の思惑で供給が滞れば経済への影響は甚大だ。

 

対中依存の強さは経済的威圧の誘因となる危うさをはらむ。IPEF参加国を含む新興・途上国の多くは中国との関係が密接で、中国を刺激することを避ける傾向がある。今回の協定を足掛かりに参加国間で対中リスクの認識を共有し、過度な依存からの脱却につなげられるかが問われよう。

 

一方、IPEFの交渉分野には供給網強化のほか、デジタル関連を含む貿易、脱炭素化に向けたクリーン経済、汚職や脱税を防ぐ公正な経済もある。その交渉も一段と加速させなくてはならない。

 

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インド太平洋経済枠組み(IPEF)の発足会合の冒頭、記念撮影に臨む(左から)岸田文雄首相、バイデン米大統領、インドのモディ首相=5月23日、東京都港区(川口良介撮影)

 

現状では、日米などと途上国の間で交渉姿勢に隔たりがあり、米国が求めるデジタルや環境などのルール作りで歩み寄るのは容易ではない。貿易交渉には、途上国の米市場進出につながる関税撤廃交渉が含まれず、途上国側の実利が見えにくい面もある。

 

だからこそ、アジア諸国などと良好な関係を築いてきた日本が交渉を牽引(けんいん)すべきだ。中露などと対峙(たいじ)する上で新興・途上国との協力が欠かせないとの考えは先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)でも確認された。11月の全体合意を目指すIPEFにおいても、その意義を踏まえておきたい。

 

 

2023年5月31日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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