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3100人が納骨できる「前方後円墳」型墓地に応募殺到 少子高齢化で変わる終活最新事情

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遠く玄界灘を見渡す高台に造られた「古墳型永久墓」(産経新聞)

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巨大な「前方後円墳」を模したお墓が売れに売れている。福岡県新宮町の新宮霊園が令和4年4月から「日本初の本格的な『古墳』型永久墓」として売り出したところ、販売目標をはるかに上回り、約1年で約900人分が完売した。販売好調の背景には古墳というインパクトに加え、少子高齢化によるお墓の後継難という問題も潜んでいた。

 

遠く玄界灘を見渡す新宮町の高台に前方後円墳はあった。全長53メートル、円墳部分の直径16・3メートル、高さ3・5メートル。全体は芝で覆われ、周囲には死者の魂を鎮めるために置かれたという「埴輪(はにわ)」が40体ほど並んでいた。全体で3100人分を納骨できる。

 

前方後円墳を模した「古墳型永久墓」。空き待ちが出るほど好評という(新宮霊園提供)

 

1人分の区画は30センチ四方で、芝生にそれぞれに番号が振られ、石で作られた銘板に亡くなった人の名前が刻まれていた。埋葬の際には、表面の芝から15センチほど下の土中にある樹脂製の納骨室に骨壺を納め、再び土で覆う。土中の微生物が分解できる綿を使った納骨袋で埋葬する方法もあり、文字通り土に還ることも可能だ。毎月1回、霊園が合同法要を執り行っている。

 

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価格は1人分28万円で、7万7千円の永久管理費が必要となる。当初は年300人分の販売を目標に掲げていたが、4年4月から売り出した1200人分の区画は、1年余りで900人分が契約済みに。問い合わせも相次いでいることから、500人分を追加販売するという。

 

なぜ前方後円墳を模したお墓を開発したのか。

 

新宮霊園の松田大佑広報室長は開発の経緯について「『亡くなった後、土に還りたい』という自然葬への要望が多く寄せられていた」と話す。また、平成29年に「宗像・沖ノ島と関連遺産群」が世界遺産に登録されたことにも刺激を受け、古墳型永久墓のインスピレーションを得たという。

 

開発に当たり、まずは福岡県八女市などにある「八女古墳群」を視察した。ここには4~7世紀にかけて築造された円墳や前方後円墳など約300基があり、こうした実際の古墳を実地調査して構想を温めた。

 

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「古墳型永久墓」の周辺には「埴輪」も設置されている(産経新聞)

 

造成は29年から開始。霊園の土地に見本となる円墳を作成したが、「ただの盛り土の山にしか見えなかった」(松田氏)。また、実際に販売する墓域は細長い土地という制約もあり、最終的に縦長でインパクトのある前方後円墳に決まった。墓域の造成は31年から始め、令和3年9月にすべてが完成し、表面を覆う芝が落ち着いた翌年4月からの販売を始めた。

 

古墳型永久墓の見学者は40~70代が多く、親子連れや、追加販売を待つ人も少なくないという。松田氏は「古墳型永久墓の契約者は、お墓の継承者がいない、あるいは子孫に墓守の負担を掛けたくないという方が多い。家族の在り方・考え方の変化がお墓の形にも表れてきた」と説明してくれた。

 

「古墳型永久墓」の周囲には埴輪が並んでいる(産経新聞)

 

実際、お墓や葬儀、相続などの「終活関連サービス事業」を展開する鎌倉新書(東京都中央区)が実施した「お墓の消費者全国実態調査(2023年)」によると、墓石を使う「一般墓」に比べて、墓石の代わりに樹木や草花を植える「樹木葬」などの「継承者不要」のタイプが主流になった。

 

調査では令和4年に同社が運営するサイトを通じてお墓を購入した人の割合は「樹木葬」が51・8%で過半数を突破し、一般墓に代わる施設として普及してきた「納骨堂」20・2%、「一般墓」19・1%と続いた。

 

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先の大戦後、連合国軍総司令部(GHQ)は、日本に「封建的習慣の廃止」を求め、その具体策のひとつとして家父長に権限が集中する家制度を無効化した。現代に蘇った古墳墓は、戦後民主主義が行きついた個人主義の一つの表れともいえそうだ。

 

筆者:千田恒弥(産経新聞)

 

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