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1席数十万円も…相次ぐ夏祭り高額プレミアム席、戦略は

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祇園祭前祭の山鉾巡行が行われた夕方に四条通を勇壮に進む神輿=7月17日午後、京都市東山区(渡辺恭晃撮影)

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新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に引き下げられ初めて迎えた夏、各地で4年ぶりとなるコロナ禍前の元の姿を取り戻した夏祭りが行われる見通しだ。本来は無料で楽しめるものだが、存在感を放つのが1席が数十万円という高額なプレミアム席。高い料金を払ってでも特別な場所で祭りを見たいというインバウンド(訪日外国人客)ら富裕層の需要に応えるねらいがある。キーワードは付加価値。専門家が相次ぐ「プレミアム戦略」を読み解いた。

 

祇園祭前祭の山鉾巡行で設けられた「プレミアム観覧席」には訪日外国人観光客の姿もみられた=7月17日、京都市(渡辺恭晃撮影)

 

日本三大祭りの一つ、京都・祇園祭。7月17日に行われた前祭(さきまつり)の山鉾(やまほこ)巡行で販売されたのは1席40万円の「プレミアム観覧席」だ。高さ1メートルの台座を設置し、畳を敷いて座椅子を置いた和のしつらえで84席を用意。山鉾が90度方向転換する「辻回し」を目の前で楽しめるほか、酒類を含む飲み物や京都の「おばんざい」を提供する。英語や中国語に対応したイヤホンガイドで巡行を解説する。

 

ホームページの募集案内は基本的に英語だ。企画した京都市観光協会によると、観光庁のインバウンド向け事業に採択され、補助金の対象にもなっている。収益は祇園祭の継承のために活用するといい、担当者は「毎日のように問い合わせがある」と手応えを語る。

 

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祇園祭前祭で「プレミアム観覧席」から山鉾巡行を楽しむ女性ら=7月17日午前、京都市中京区(渡辺恭晃撮影)

 

同じく話題になっているのが、徳島・阿波おどり(8月12~15日)でのインバウンド向け最高級桟敷席「AWAODORI hospitality seat」だ。価格は1人20万円で期間中、計160席を販売する。昨年までは最も高額でも5千円程度だったといい、破格な価格設定といえる。屋外の演舞場に踊り手たちを正面から観覧できる桟敷席を設置。地酒や地鶏「阿波尾鶏」などを使った食事も楽しめる。踊り終えたばかりの踊り手による英語通訳付きの解説も予定している。

 

徳島の夏を彩る阿波おどり=2018年8月12日、徳島市(鈴木健児撮影)

 

東北三大祭りの一つ、青森ねぶた祭(8月2~7日)でも100万円のVIPシートの販売が始まった。1組8人まで利用できるため、最も安い場合で1人12万5千円から楽しめる計算になる。ゆったりとした桟敷席で、ねぶた師による解説を聞きながら目の前を進むねぶたを観覧。地元料理に舌鼓を打ち、専属コンシェルジュによる接客サービスもある。

 

昨年、各日1シートを2日間限定で売り出したところ完売し、祭りの終了後に富裕層や旅行代理店からの問い合わせが殺到した。青森市とともに販売を手がける運営企画会社「オマツリジャパン」(東京)の菅原健佑さん(30)は「アフターコロナのフェーズに入り、インバウンドのニーズは多様化している。祭りは重要な観光資源。地域経済の振興にも貢献できるし、祭りの担い手にも還元できる」と意義を話す。

 

「青森ねぶた祭」=2022年8月2日夜、青森市(萩原悠久人撮影)

 

相次ぐ日本の夏祭りのプレミアム戦略。航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏(44)は「地元では『無料の祭りにそんな値段を取るのか』と言われるだろうが、売れれば価値があるという判断なのだろう」と話す。

 

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人によって祭りへの価値観が異なるとした上で「9割が高いと思っても1割が適正と思えばいい」とその戦略を解説する鳥海氏。その収益に関しても「祭りの協賛金のようなもので、祭りの運営にプラスになるのならどんどんやればいい。今後も(プレミアム観覧席は)増えていくだろう」と推測した。

 

筆者:田中幸美(産経新聞)

 

 

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