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危うい安倍首相の対中観

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ワシントンから安倍晋三首相の中国に対する言明を読むと、なんとも奇異に映る。危険さえも感じる。首相自身が日本の安全保障の基軸だと宣言する同盟相手の超党派の対中姿勢とは正反対であり、トランプ政権の対中政策を否定するような観さえあるからだ。

 

安倍首相は10月4日の所信表明演説で中国との「あらゆるレベルでの交流の拡大」を強調した。米国では逆に中国の無法な対外攻勢を抑え、対中交流をあらゆる面で画期的に縮小するようになったのだ。だが米国と比較しなくても安倍首相の言明には無理が多すぎる。首相の対中融和姿勢は1月の施政方針演説での「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」という言明の延長だろう。

 

だが日本領土の尖閣諸島の日本領海に武装艦艇を恒常的に侵入させ、同諸島の武力奪取の構えさえみせる中国との関係がなぜ「正常」なのか。

 

中国は日米同盟に反対し、日本のミサイル防衛など米国との安保協力はすべて抑えようとする。大軍拡による日本への軍事脅威も明白である。国内では「抗日」の名の下に戦時の日本軍の「残虐」だけを拡大して教える年来の反日教育を変えていない。習近平政権は日本の「侵略」の歴史としての盧溝橋事件や南京事件の記念を国家最高レベルの行事に引き上げたままである。

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中国は国内で活動する日本企業にも知的所有権や合弁の扱いなど米国が非難する不透明な慣行を変えていない。まして最近では新疆ウイグル自治区や香港での人権抑圧を顕著にしてきた。安倍首相が演説で熱をこめた人権尊重への明白な背反である。そんな相手との関係がなぜ「正常」なのか。

 

習近平政権は日本には微笑をみせ始めた。国内でも反日と映る活動を抑え出した。トランプ政権から全面対決を迫られ、日本との対立を減らして、日米離間をも狙うという戦術である。その証拠に前記のような日本への敵性ある政策の根幹はなにも変えていない。

 

安倍政権が中国に対して唱える「競合から協力へ」という標語や中国の「一帯一路」構想への間接協力はトランプ政権の政策とは正反対である。同政権は中国を米国主導の既成の国際秩序を崩そうとする危険な挑戦者と位置づけ、「協力から競合へ」と主張する。「一帯一路」も習政権の覇権的な野望として排する。

 

トランプ政権は今月にはウイグル民族の弾圧にかかわる中国政府高官の訪米を拒む措置を発表した。安倍政権の「交流拡大」とは完全な逆行である。

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安倍政権のこうした対中融和姿勢にはトランプ政権の関係者からすでに抗議が発せられた。同政権の国務省引き継ぎの中核となったクリスチアン・フィトン氏は最近の論文で警告していた。

 

「米国が中国の無法な膨張を抑える対決姿勢を強めたときに日本が中国に融和的な接近をすることは日米同盟やトランプ政権への大きな害となる」

 

現在は米研究機関「ナショナル・インタレスト・センター」上級研究員のフィトン氏はこう述べて、このままだと「安倍首相はトランプ大統領の友人ではなくなる」とか「米国は日本製自動車への関税を高める」という最悪シナリオをも示すのだった。

 

筆者:古森義久(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)

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10月13日付産経新聞【古森義久のあめりかノート】を転載しています。

 

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