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【主張】横田滋さん死去 安倍首相は膠着破る行動を

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痛恨の訃報である。

 

拉致被害者、横田めぐみさんの父、滋さんが6月5日、亡くなった。87歳だった。妻の早紀江さんは2人の息子と連名で「北朝鮮に拉致されためぐみを取り戻すために、主人と二人で頑張ってきましたが、主人はめぐみに会えることなく力尽き、今は気持ちの整理がつかない状態です」とコメントした。

 

 

拉致への怒り結集せよ

 

夫妻は、拉致被害者救出運動の象徴的存在だった。改めて、拉致誘拐という北朝鮮の国家犯罪に怒りを新たにする。北朝鮮は拉致を認めて謝罪した後も再調査の約束すら反故(ほご)にしたままだ。

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夫妻をはじめとする家族が切望してきたのは、被害者全員の即時帰国である。

 

安倍晋三首相は5日、悲報に接し、めぐみさんらの帰国について「首相としていまだに実現できなかったことは断腸の思いであり、本当に申し訳ない思いだ」と述べた。

 

怒りを国民全ての思いとして結集し、これをぶつけるべき相手は北朝鮮であり、独裁者である金正恩朝鮮労働党委員長である。

 

そして国民の怒りを突きつけ、被害者全員の奪還を実現させるのは、日本政府の責務である。

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とりわけ安倍首相は拉致問題の解決を政権の「最重要、最優先課題である」と繰り返してきた。なんとしても自身の手で、めぐみさんらの救出を果たしてほしい。

 

 

めぐみさん救出の戦い

 

滋さんは平成30年4月に体調不良で入院した。4年前のリオデジャネイロ五輪当時はまだ元気で大きな時差にもかかわらず、テレビで観戦した。中でもバドミントン女子ダブルスで優勝した高橋礼華、松友美佐紀ペアの応援には力が入った。

 

バドミントンだったからだ。

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めぐみさんは、昭和52年11月15日、新潟市の中学校からバドミントン部の練習の帰りに、北朝鮮の工作員に拉致された。わずか13歳の可憐(かれん)な少女だった。

 

以来、夫妻の戦いの日々が始まった。最初の20年間は行方が分からず、滋さんは交通事故や誘拐などさまざまな可能性をさぐって娘を捜し続けた。

 

平成9年に亡命した北朝鮮工作員の証言などから北朝鮮による拉致が確実視されるようになり、夫妻は救出運動の先頭に立った。やがて滋さんは拉致被害者家族会の初代代表も務めた。

 

14年の日朝首脳会談で北朝鮮は拉致の事実を認め、蓮池薫さんら5人の被害者が帰国したが、めぐみさんら8人については「死亡」と伝えられた。滋さんらはこれを信じず、16年に「遺骨」として提供された骨はDNA鑑定で別人のものと判明した。その後も娘の奪還に向け、長くつらい残酷な戦いの日々が続いてきた。

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北朝鮮は未来描けない

 

拉致問題は膠着(こうちゃく)状態に陥っている。5月19日の閣議で報告された「外交青書」は拉致の解決を「最重要課題」と位置づけ、安倍首相が昨年5月に「条件を付けずに金正恩朝鮮労働党委員長と会い、率直に話をしたい」と表明したことを盛り込んだ。だがその表明からも、すでに1年を過ぎている。

 

拉致問題の解決に理解を示すトランプ大統領と金正恩氏の米朝首脳会談も2度の開催で止まったまま、再開の兆しはみられない。それどころか北朝鮮は今年に入り、短距離弾道ミサイルなどの発射を繰り返して国際社会への挑戦を再開している。

 

安倍首相は滋さんの死去に「痛恨の極み」と言葉を詰まらせ「チャンスをとらえて果断に行動し、(拉致被害者の帰国を)実現したい」と強調した。だが、待っていてもチャンスはやってこない。政府は自ら膠着を破る行動を起こすべきだ。拉致の解決なしに北朝鮮は未来を描けないと理解させる、交渉の原点に返るべきだ。

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早紀江さんは2月4日、本紙への寄稿「めぐみへの手紙」にこう記していた。「私たちに、残された時間は本当にわずかです。全身全霊で闘ってきましたが、もう長く、待つことはかないません。その現実を、政治家や官僚の皆さまは、どう考えておられるのでしょうか。私たちはテレビで、のどかにさえ見える方々の姿を、見つめ続けています。皆さまには、拉致の残酷な現実をもっと、直視していただきたいのです」

 

これを読んで胸は痛まないか。政治家、官僚のみならず、全ての国民に向けられた言葉と解釈すべきである。

 

 

2020年6月7日付産経新聞【主張】を転載しています

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