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深まる米中分断、最大の脅威 主導国不在、医療品・食糧奪い合い―米政治学者イアン・ブレマー氏

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米国と中国の対立が新型コロナウイルス感染拡大の責任をめぐり一段と激しくなっている。G7を構成する主要先進国が指導力を失い、G20も機能しなくなった「Gゼロ」という国際社会のリスクを警告してきた米国際政治学者のイアン・ブレマー氏は、双方の分断がさらに深まり、世界の「最大の脅威」になると懸念する。

 

 

―新型コロナ危機で世界はどう変わるか

 

グローバリゼーションは減速し、米中の経済圏が分断される『デカップリング』が深まる。分断はすでに先端技術のサプライチェーン(調達・供給網)で進み、今回の危機では医薬品や医療用品を囲い込む動きが目立った。製造・サービス業に今後広がり、(消費地の近くで生産する)ローカリゼーションや(外部委託した業務を自社に戻す)インソーシングも進む。その結果、国や企業の生産性や成長率が低下する。

 

米中は新型コロナの発生源をめぐり非難合戦を展開し、互いに信頼を欠く。経済の相互依存が弱まるにつれ、両国の対立は一段と厳しくなっていくはずであり、地政学的に最大の脅威になると懸念している。

 

 

中国の影響力拡大

 

―中国への依存は世界的に弱まるのか

 

中国の労働力単価が上昇し、世界の工場とされた中国で生産する収益性は低下した。法の支配がなく、検閲が行われる政治システムをみて、中国に成長の機会を見いだしてきた多くの企業は以前と異なる目を中国に向けつつある。

 

ただ、中国は新型コロナの流行封じ込めのため住民を迅速かつ効果的に隔離し、欧米諸国に先駆けて経済活動の再開につなげた。他国への支援を積極的に進めたこともあり、多くの国が中国への傾斜を強めるかもしれない。特に東南アジアやアフリカ南部、南欧、南米で米国よりも中国と手を結ぼうという国が増えてもおかしくはない。

 

―保護主義が強まることを心配しているか

 

世界でマスクや防護服などの医療用品が足りず、(物資を自国で抱え込む)保護主義的な行動がみられた。ワクチンも仮に開発に成功すれば、その対象になりかねない。気候変動が深刻化し、(農産物が不作となって)各国が食糧の調達を競い合う事態も懸念されている。保護主義的な傾向は感染の収束後も続き、加速する恐れがある。政治の機能不全や国際的な対立は、この問題を一層悪化させる要因となる。

 

 

民主主義のピンチ

 

―権威主義の国は国家権力とハイテクを駆使した監視で感染を押さえ込んでいる。人権を重視する民主主義は危機対応で不利か

 

2001年の米中枢同時テロ後にもあった議論だが、安全保障と人々の自由やプライバシーは(一方を優先させると他方が損なわれる)トレードオフの関係にある。現在の状況は、民主主義下でも監視の必要性が一定程度あることを示しているのかもしれない。今後、経済活動の再開が本格化し、人々が職場に戻っていく過程で(追跡技術などを提供する)ハイテク企業の役割は重要になる。

 

(統治能力が)弱い新興国には中国が効率的な統治モデルだと映るだろう。世界では多くの人が、欧米先進国でも社会・経済制度は都合よく操作され格差拡大を招いていると考え始めている。こうした傾向は(西欧的な)代議制民主主義の土台をむしばみかねない。

 

―膨大な失業者の発生など、米国が直面する経済危機の影響は

 

好景気だったコロナ危機の以前でも、『自分たちは置き去りにされてきた』と感じた人たちが政治の支配層に反感を募らせ、英国の欧州連合(EU)離脱やポピュリズム(大衆迎合主義)といった動きにつながった。そんな労働者層や中間所得層が職を失い、もっとも大きな打撃を受けている。多くの民主主義国でみられた(体制不信の)傾向は強まると恐れている。

 

聞き手:塩原永久(産経新聞ワシントン支局)

 

 

【プロフィル】イアン・ブレマー
米スタンフォード大で博士号(政治学)取得。国際的な政治リスクの分析情報を提供するコンサルティング会社「ユーラシア・グループ」を1998年に設立。現在は社長。50歳。著作に「『Gゼロ』後の世界―主導国なき時代の勝者はだれか」など。

 

 

2020年5月11日付産経新聞【コロナ 知は語る】を転載しています

 

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