fbpx
Connect with us
Advertisement

「夢の素材」は地球温暖化を救えるか

Published

on

~~

 

2021年ノーベル物理学賞に、地球の気候変動予測に先駆的な業績があった真鍋淑郎さんが決まり、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)がまもなく始まる。地球温暖化にかかわるニュースが相次いでいる。企業の取り組みも目立ち始めており、今年はカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)実現に向け、節目の年になりそうだ。その中で、「夢の新素材」と言われるセルロースナノファイバー(CNF)に注目が集まる。木材などを原料とする軽くて丈夫な繊維で、持続型や脱炭素、低環境負荷などのフレーズをもって語られる。「夢の新素材」が秘める可能性とは。

 

 

鋼鉄の強さの5倍以上、重さは5分の1

 

「CNFはつくればつくるほど、(温室効果ガスの)マイナス排出につながる」

 

CNFについて、10月5日に環境省などが主催したセミナーで、サステナブル経営推進機構の鶴田祥一郎氏は、そう説明した。

 

昨年10月、菅義偉前首相が「2050年までの実現を目指す」と宣言したカーボンニュートラルは、地球温暖化の要因である二酸化炭素(CO2)の排出分と吸収・除去する分をプラスマイナスゼロにする考え方。鶴田氏が強調したのは、CNFは、Co2排出がないため、「プラスマイナスゼロ」をさらに上回る「マイナス排出」が実現できる可能性があるという点だ。

 

では、CNFとはどんな素材なのか。

 

木材などに含まれるセルロースをナノレベル(ナノは10億分の1)の幅にまで微細化した繊維状の物質で、もともとは植物の細胞壁などを形成しているものだ。鋼鉄に比べ重さは5分の1程度だが、5倍以上の強度があるとされる。

 

既に消臭機能を高めた紙おむつや、シューズの靴底部分などに使われているほか、自動車・家電などに使用する樹脂など、様々な分野への応用が期待されており、「夢の新素材」とも呼ばれている。

 

このうち自動車への応用では、環境省と京都大学、企業など計22の企業・機関が参加し、CNFを使って、13の自動車部品を装備したナノセルロース自動車を製作。一般の車と比べ、16%の軽量化、11%の低燃費化がはかられ、その成果を一昨年の東京モーターショーで披露した。

 

今回のセミナーに参加した京都大生存圏研究所の矢野浩之教授は「モノができるようになってきて、社会実装も進んできている」と話した。

 

 

廃棄物ゼロへの可能性

 

そもそも植物由来でリサイクルが可能で、使った後に焼却してもCO2増加にはつながらない。化石燃料由来のプラスチックなどに置き換われば、脱炭素社会の実現につながるとの期待がある。また、大量生産や大量消費、大量廃棄という生活様式から、モノを長く使い、廃棄を削減していく考え方「サーキュラーエコノミー」につながるとの期待もある。確かに、廃棄物が全く、すべてがリサイクルの輪の中で完結できれば、廃棄物のない仕組みができあがる。

 

今回のセミナーでも、そうした取り組みや指摘、期待の声が相次いだ。東京大大学院の磯貝明教授は「車のタイヤゴムのカーボンブラック(すす)を減らせないだろうか。タイヤは徐々に削れてカーボンブラックが環境中に排出されていく。CNFに置き換えられれば環境に悪い影響を及ぼすことがなくなる」と指摘した。また、CNFを材料とした物流資材に使うことで、カーボンニュートラルにつながる取り組みを実施している企業からの報告もあった。

 

 

「ニッチでガラパゴス」の懸念

 

ただ、課題も残る。

 

矢野経済研究所の調査によると、2020年のCNFの世界生産量は57トン、21年も57~60トンにとどまる。出荷額は53億7500万円と横ばいか微増の見込みだという。

 

経済産業省による「平成25年度製造基盤技術実態等調査」では、2030年の市場規模の目標として1兆円をあげている。その数字と比較すると、物足りない。

 

同研究所は、CO2削減効果やリサイクルが可能だという強みを認めつつ、CNFは主に機能性の添加剤、樹脂強化材として使われているが、規模が大きくならないと言及。その上で「日本発の新しい高機能材料としてワールドワイドでの需要拡大が期待されてきたが、このままでは市場が本格的に確立する前に『高性能だが高価でニッチなガラパゴス』な材料になる懸念も否定できない」と指摘する。

 

メーカー側がCNFを使う必然性、メリットを示しつつ、懸念が払拭されれば、25年の出荷額が101億6000万円、30年には同258億円になると予測しているものの、同研究所は「当初期待していたほどの市場規模が形成されておらず、参入メーカーはさらなる成長のための市場開拓、用途開拓が求められる」としている。

 

著者:大谷卓(産経新聞)

 

 

2021年10月9日産経ニュース【びっくりサイエンス】を転載しています

 

この記事の英文記事を読む

 

 

Continue Reading
Click to comment

You must be logged in to post a comment Login

Leave a Reply