【主張】北京五輪と日本 外交ボイコットの決断を
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バイデン米大統領が、北京冬季五輪について、「外交ボイコット」を検討していることを明らかにした。米紙ワシントン・ポストは、11月中にも正式決定すると報じた。
開会式などへの首脳や閣僚、政府使節団の派遣を見送るもので、選手団は五輪に参加して、競技で全力を尽くす。
中国の習近平政権による新疆ウイグル自治区や香港などでの人権弾圧に抗議するねらいがある。
北京五輪を、人権を抑圧して恥じない習政権を称揚する場にしてはいけない。外交ボイコットは深刻な人権侵害を許さない意思を示し、弾圧に苦しむ人々に寄り添うものだ。人権を重んじる国として日本もその輪に加わるべきだ。
中国は、100万人以上のウイグル人を強制収容所へ送り、女性への不妊手術を強要しているとして国際社会から批判されている。国家安全維持法の施行で、香港から言論の自由や民主主義を奪った。チベット、内モンゴル両自治区でも弾圧を重ねている。
米民主党のペロシ下院議長は今年5月、北京五輪への外交ボイコットを提唱した。ペロシ氏は「中国でジェノサイド(民族大量虐殺)が起きているのに訪中する国家元首は、人権を語る道徳的権威がない」「中国政府に栄誉を与えてはならない」と述べた。米上下両院は6月、外交ボイコットを求める対中競争法案を可決した。
人権問題であるにもかかわらず、岸田文雄首相があいまいな態度を示しているのは解せない。
岸田首相は19日のインタビューで、北京五輪への外交ボイコットについて、「今の段階では何も決まっていない。日本の国益などもしっかり考えながら判断する」と述べるにとどめた。
対応を迷っているのなら歯がゆい限りだ。とるべき態度は一つだ。習政権に人権弾圧の即時停止を求め、受け入れられないなら外交ボイコットに踏み切ると表明することである。選手に負担をかけてはならないのはもちろんだ。
憲法前文は「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会」で「名誉ある地位を占めたい」と謳(うた)っているではないか。
首相や閣僚、使節団が五輪の開会式などで、弾圧を続ける中国政府の責任者と握手することほど、日本の名誉と国益を損なうことはないと知るべきである。
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2021年11月21日付産経新聞【主張】を転載しています
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