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「厳冬期」を迎える中国経済

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中国の不動産業界でよく使われる言葉の一つに「百強房企」というのがある。

 

中国語では不動産は「房地産」と表記され「百強房企」とは「最も強い不動産開発企業の百社」、ということである。「百強房企」には当然、中国大手の不動産開発企業のほとんどが入っているが、12月2日、中国国内の経済紙が一斉に「百強房企」に関する衝撃のニュースを掲載した。

 

全国の不動産情報の収集・分析を主な業務とする民間研究機関「克而瑞研究中心」の発表によると、今年11月、上述の「百強房企」の売上高総額は約7500億元(約13兆4000億円)で、それは10月の売上高よりも3・4%減、前年同期比では何と37・6%減となった。

 

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経済状況を見るための多くの統計数字の中で「前年同期比」の数字は一般的に最も重要視されている。例えば、普通でいう一国の経済成長率はまさに前年同期比の伸び率であって、経済の増減を最も適切に表している。したがって、中国「百強房企」の11月売上高総額が前年同期比で4割近くも減少したことは全国の経済紙を驚かせ、不動産市場に大きな衝撃を与えた。

 

この数字の意味するところは中国不動産市場の急速な冷え込みであり、不動産業界を根底から揺るがすような深刻事態の発生である。こうなった原因の一つはやはり、中国を代表する不動産開発大手、恒大集団の債務問題が浮上して以来、国内の投資家たちが不動産市場の成り行きに大きな懸念を抱くこととなり、投資の不動産離れが始まっていることであろう。

 

問題は、不動産市場が今後どうなるのかだが、12月1日、民間研究機関の中国指数研究院は、不動産市場の暗澹(あんたん)たる未来を暗示するいくつかの統計数字を公表した。

 

中国の場合、不動産開発業者が不動産をつくるのにはまず、政府関係から土地の使用権を譲渡してもらうのだが、前述の中国指数研究院の統計によると、今年1月から11月、上述の「百強房企」が支払った土地譲渡金の総額は2兆3461億元であって、前年同期比では17・7%の減少となった。
「17・7%減」はすでに深刻な数字だが、同じ中国指数研究院が発表したもう1組の数字はさらにショッキングなものである。

 

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曰(いわ)く、今年11月、上述の「百強房企」の中の上位50社の場合、土地譲渡に支払った金額は10月と比べれば72・3%減となって、前年同期比では91・4%減となったという。

 

「72・3%減」と「91・4%減」のどちらも、経済分野ではあまり出ない極端な数字だが、土地譲渡激減の意味することは、各不動産開発業者が今後における不動産市場の冷え込みを見通して、しばらくは不動産をもうつくらない、と決め込んでいることである。

 

これから冬を迎えて、どうやら中国の不動産開発業界も「冬眠状態」となっていく様子である。それが現実となれば中国経済全体に与える打撃の大きさは計り知れない。

 

昨年1年間、中国全国で行われた不動産投資総額は約14兆元(約250兆円)であった。同じ2020年の中国の国内総生産(GDP)は100兆元余だから、不動産投資は実は、GDPの14%程度をつくり出している。その波及効果を合わせると、中国経済の約3割が不動産開発に頼っていることは中国国内の常識である。

 

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もし、中国の不動産開発業がこれから「冬眠」に入ってしまうようなこととなったら直ちに、中国経済成長率の大幅減と経済全体の地滑り的な沈没をもたらすであろう。どうやら中国経済も再び「厳冬期」に入ろうとしているのである。(石平)

 

筆者:石平

 

 

2021年12月9日付産経新聞【石平のChina Watch】を転載しています

 

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