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無言貫く北京五輪スポンサー企業 中国人権問題に対応苦慮

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北京冬季五輪の開会が迫る中、中国国内の街中やテレビでは大会を盛り上げようと、中国企業による五輪関連の広告が目立ってきた。一方で、欧米や日本企業は影を潜める。中国政府による人権問題への批判が国際社会で高まる中、五輪を支援する企業として前面に出ることが必ずしも得策ではないとの判断があるとみられ、人権問題などにも無言を貫いている。

 

 

現地の広告目立たず

 

雪山を滑降中に転倒する女性スキーヤーが、牛乳を飲んだとたんに華麗な滑りを見せる。国際オリンピック委員会(IOC)の最高位スポンサーに2021年から加わった中国乳業大手の中国蒙牛乳業が放映するテレビCMだ。

 

出演するのはフリースタイルスキー女子の谷愛凌(こく・あいりょう)選手。谷選手は米国生まれのファッションモデルという顔もあり、金メダル候補として中国国内で注目を集めている。同社だけでなく、大会を盛り上げようとする中国企業は多いが、これまでの五輪ではPRに余念がなかった欧米や日本企業の影は薄い。

 

中国政府による新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港などにおける人権問題への批判が米欧を中心に高まっており、大会支援の動きを強めれば、人権軽視と受け取られるリスクがあるためだ。ただ、人権問題に言及すれば中国国民の反発を招きかねない。昨年12月には、米半導体大手インテルが仕入れ先に新疆の製品や労働力を使わないよう求めていたことが中国で批判され、謝罪に追い込まれた。

 

 

製品提供はするが…

 

五輪開催について、どんな発言も批判につながるリスクがある状況に、最高位スポンサーのトヨタ自動車も、選手や関係者の輸送のため、水素で走る燃料電池車(FCV)の「ミライ」やバス車両「FCコースター」、福祉車両「シエナ」など約2200台を提供するが、開催期間中のPR活動やスポンサー枠のチケットの活用などについてのコメントは避ける。パナソニックやブリヂストンも、自社製品などで大会支援はするが、現地でのPR活動や人権問題については「回答を控えたい」とするのみだ。

 

味の素もアミノ酸を使用する製品の提供などで日本選手団の栄養支援を行うが、4月に社長に就任する藤江太郎執行役専務は「アスリートのサポートが日本人の意識高揚につながりコーポレートブランド価値も上がる」と、あくまでも選手をサポートする立場を強調する。選手に競技用ウエアを供給する日本メーカーの担当者も「選手のウエアを通じて自社製品がアピールできれば」と今大会の広報戦略の難しさを指摘する。

 

こうした企業の動向について明星大の細川昌彦教授は「企業にとって無言を貫くことが最もリスクが小さいと判断したのだろう」と理解を示す。政府の対応や五輪がスポーツの祭典という点を考慮すれば、支援しても人権問題などで反発する人は少数派だからだ。

 

 

ビジネスでの無言はリスク

 

ただ細川氏は「五輪以外で、同様の対応を取ることは大きなリスクになり得る」とも指摘する。通常の経済活動の中で人権問題や経済安全保障に関わる問題が発覚すれば、欧米や国内の市場から排除されかねないからだ。その上で「中国でビジネスをする際は、これまでとは質的に違う地政学的リスクに直面しており、自社の事業にどういうリスクが潜むかきちんと調べ、リスクに応じた対応を経営者が判断することが今後は重要になってくる」と話す。

 

政府の姿勢でも同様のことが言える。経済同友会の桜田謙悟代表幹事も五輪では旗幟(きし)鮮明にする必要はないとしつつ、それ以外では「人権問題とか報道の自由に対する制限について、きちんとしたメッセージを発信していくべきだ」と話している。

 

筆者:三塚聖平(産経新聞)

 

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