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謎の森林買収に中国の影 租税回避地の法人を駆使

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大雪山を望む森林地帯500ヘクタール余りが買収された=北海道

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安全保障上重要な土地の買収対策となる土地利用規制法の全面施行を9月に控え、自民党の高市早苗政調会長は1月24日の衆院予算委員会で、重要な防衛施設に近い土地が中国資本と関係の深い事業者によって取得されていることに言及し、危機感を示した。農林水産省の資料によると、日本の森林を買収している外国資本は中国を筆頭に英領バージン諸島やシンガポールが続く。この英領バージン諸島の背後にも中国の姿が見え隠れしている。

 

高市政調会長は同日の予算委で、全国の再生エネルギー問題について質問。その中で、「中国資本と関係の深い事業者が航空自衛隊レーダー基地からおおむね35キロに位置する土地を取得。国防上の問題があるのではないか」などと指摘した。

 

自民党の高市早苗政調会長

 

農林水産省は平成18年から毎年、外国資本による森林買収の実態を公表している。それによると、令和2年までに、所在地が海外にある外国法人などに買収された日本国内の森林は278件、2376ヘクタール。買収は中国(香港を含む)がトップで、英領バージン諸島、シンガポールが続く。しかし、「この買収件数などはあくまで届け出があった売買だけ。未届けのケースも多く、実数は把握できない」(北海道庁)という。

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英領バージン諸島はタックスヘイブン(租税回避地)として知られ、そこに設立登記された会社は、一般に「BVI(British Virgin Islands=英領バージン諸島)法人」と呼ばれる。

 

 

北海道の中央部。大雪山を望む風光明媚(めいび)なゴルフ場跡と周辺の森林が令和2年から3年にかけ、BVI法人2社に買収された。2社は香港に拠点を置く中国系投資会社の同系列法人で、買収面積は全体で507ヘクタールに上る。

 

自治体によると、担当者はBVI法人側と面識はなく、地元在住の中国人が売買手続きなどを仲介したという。買収目的は「現況利用」(森林経営)と届けており、BVI法人側の関係者は、今後、「宿泊施設や観光客相手のレストランなどを経営していく」と説明する。だが一方で、単なる「財産管理のため」(自治体の担当者)という見方も強く、懐疑的だ。

 

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英領バージン諸島は、中米カリブ海に浮かぶ。課税が著しく軽減されたり、完全に免除されたりし、犯罪が絡む資金でマネーロンダリング(資金洗浄)の温床となっているとの指摘もされる。

 

農水省によると、これまでわが国でBVI法人に買収された森林は、届け出があった売買だけで46件、544・56ヘクタール。中国の117件、968・404ヘクタールに続き(いずれも日本国内にある関連法人名義は除く)、大きな存在感を見せている。

 

 

親会社は「(株)中国共産党」

 

BVI法人には「税金」のほかにもさまざまな特徴がある。会計監査などが義務付けられていない▽取締役会の開催義務がない▽登記内容の機密保持性が高い▽資本金が公表されず、世界中で銀行口座を開設できる―などで、高い秘匿性が用意されているのだ。

 

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英領バージン諸島で5つの会社の設立経験がある都内の60代の会社経営者によると、香港やシンガポールの会計事務所や弁護士事務所が、会社設立から登記、営業実態の調整までを行い、日本で不動産を売買する場合は、依頼を受けた日本の弁護士が常任代理人として売買契約を結び、登記手続きを担当するという。

 

 

隠される企業実態

 

「BVI法人を使うのは税法上の利点もあるが、企業実態を知られたくないから。中国系が多く、忍者のように地下に潜る道具として使われてきた。例えば、中国資本がBVI法人名義で森林を買収した場合、登記簿を見ればBVI法人と分かるがその先は開示されない」

 

BVI法人が森林などを買収する北海道・倶知安(くっちゃん)町やニセコ町、神奈川県箱根町、長野県軽井沢町などは「個人情報なので答えられない」「分からない」などと秘密保持にこだわる。概要が分かった前出の北海道のケースはまれなのだ。

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中国資本による森林などの不動産の買収についてこの経営者は「中国政府の息が直接かかった法人が(政治的な)何らかの目的を持って森林を買収していることはないと思う。中国人の富裕層が政府にばれないように、BVI法人を使って自分の財産を安全な日本に持ち出しているだけだろう。しかも、北海道のように資源が豊富なところに投資したいと考えているのだ。政治的な理由より個人の財産保全と保身のためではないか」というが、中国人の経営者からこうも聞いたという。「日本人は中国の企業を、民間企業と公営企業に分けて考えているようだが、中国人は違う。中国では『株式会社(中国)共産党』という親会社の子会社に民間経営と公営があるだけで、親会社の意向で、いつでも接収でも何でもできる。どこの会社も『株式会社(中国)共産党』の傘下企業だという意識はある」。彼はこう語った上で、クギを刺した。

 

「個人商店が買収した森林などの不動産も『株式会社(中国)共産党』の財産なのです。従って、いざとなったら、政府が、中国資本が買収した広大な森林などの不動産を全て没収することもあるし、個人的に投資したものが共産党名義に変わるということも十分考えられる。単なる個人的な投資と軽く見ていると、取り返しがつかないことになる。長いスパンで見て、特に有事の際などは十分あり得るし、中国企業自身も心得ている」

 

 

気付かない日本人

 

中国資本の日本国内での動向に詳しい事情通にこの経営者の証言をぶつけると、「常識」「気が付いていないのは日本人だけ」と一蹴された。

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中国資本による森林などの不動産買収について、多くの日本人は、その「意図」と「目的」にこだわる。だが、買収する側の意図の有無にかかわらず、いざとなると「中国共産党の所有物」になるという〝非常事態〟への布石が、日常の経済活動を通して着々と打たれているということだ。

 

この経営者の証言と農林水産省のデータを突き合わせると、中国、シンガポール(36件、198・82ヘクタール)は当然だが、英領バージン諸島にも中国資本が関与、トップ3の背後には『株式会社(中国)共産党』が控えていることになる。

 

加えて、日本国内にある外資系と思われる法人などによる森林買収(240件、5765ヘクタール)も、この3者で7~8割を占められているという。

 

中国資本や中国系資本による不動産買収の「意図」や「目的」に関係なく、買収する側自身が、親会社の意向で白いものも一瞬にして黒くなる体制を承知の上で、経済活動を展開しているのだ。意図的に日本を乗っ取ろうとしなくても、「時が来れば」との懸念は払拭できない。

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筆者:宮本雅史(産経新聞編集委員)

 

 

2022年2月7日付産経新聞【国境がなくなる日】を転載しています

 

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