【主張】WHOの武漢調査 「起源解明」にはほど遠い
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この会見結果は今後、中国の宣伝にフルに活用されるのだろう。中国にお墨付きを与えるための調査団派遣だったのかと疑いたくもなる。再調査が必要ではないか。
新型コロナウイルスの起源解明を目指した世界保健機関(WHO)の国際調査団が中国湖北省武漢市での調査を終えて現地で会見した。調査団は米国のトランプ前政権が主張していた「中国科学院武漢ウイルス研究所」からのウイルス漏洩(ろうえい)の可能性を「極めて低い」と否定し、「今後は調査しない」と述べた。
最初に集団感染が確認された武漢の「華南海鮮卸売市場」に関しては感染の経緯は不明とし、武漢以外からの冷凍動物食品が感染経路となった可能性にも触れた。会見に同席した中国側の担当者は、華南市場は「恐らく最初の感染発生地ではない」と述べた。
発表内容は、ほぼ中国側の主張の追認といえた。だが新型コロナによる集団感染が確認されて1年以上を経ての調査である。これほどの時間を要したのは中国側が調査団の受け入れを拒否してきたからだ。1年あれば、痕跡を消滅させることも容易だったろう。
ようやく武漢入りした調査団だが、華南市場の調査は1時間強で打ち切られた。一方で中国共産党がコロナへの「勝利」を誇示する展覧会への訪問には時間が割かれた。すべての行動には中国側関係者が同行しており、調査日程も中国側が主導したことを物語る。
監視の中で中国側が用意した資料と関係者に当たり、どれだけ真実に迫ることができたのか、大いに疑問である。会見には中国の国家衛生健康委員会幹部も出席し、司会は同委の報道官が務めた。
会見開始時間が予定より大幅に遅れたのは、直前まで調査団と中国側で内容を調整した可能性もあるという。
WHOは新型コロナの感染拡大当初から、国際社会の信用を損ねていた。テドロス事務局長は昨年1月、北京を訪問して習近平国家主席と会談し、「中国政府が迅速で効果的な措置を取ったことに敬服する」と絶賛した。トランプ前大統領はWHOを「中国の操り人形」と呼んだ。
WHOが信用回復を望むなら、改めて中国を離れた調査団とともに会見し、中国当局による初期の隠蔽(いんぺい)疑惑についても明確に所見を述べるべきだ。
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2021年2月12日付産経新聞【主張】を転載しています
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