竹島のジオラマを前にする島根県立大の坪井慶太さん(右)と綱井亘さん=松江市の竹島資料室
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韓国の不法占拠が続く竹島(島根県隠岐の島町)に関する資料を展示する松江市の竹島資料室に、10月から4人の大学生が「学生解説員」として配置された。事前に竹島について学習し、理解を深めた若者たちが、若者らしい視点で来場者に竹島問題を分かりやすく説明する。文部科学省の学習指導要領に基づき、学校現場でも竹島を固有の領土とする指導が段階的に始まっており、若い世代への啓発も進んでいる。
歴史を学ぶ
「みなさんは、竹島についてご存じでしょうか」
10月上旬の土曜日の午後、竹島資料室の一室で、いずれも島根県立大人間文化学部1年、坪井慶太さん(18)と綱井亘さん(19)が、呼びかける。2人は、竹島が日本の領土であることを学ぶ資料室のスライドを使って説明を始めた。
江戸時代の元禄9(1696)年に鳥取藩から江戸幕府に提出された竹島周辺の絵図を示したり、竹島の位置や形状を説明したりと基礎知識から入る。
2人は途中で説明役とスライド操作役を交代しながら、一生懸命に話を続ける。
そして、明治30年代以降、隠岐の人たちによる竹島でのアシカ猟やワカメ採取が行われていたことが分かる写真を提示して竹島が日本人の暮らしに結びついていたことを伝え、韓国による不法占拠の歴史、問題解決への国や県の取り組みも紹介。「竹島についての正しい知識をみんなで学びましょう」と約10分間の解説を締めくくった。
坪井さんは「基本のシナリオをただ読み上げるだけでなく、より伝わりやすいように、自分の言葉で話していきたい」と意気込む。資料室の啓発推進員、藤原弘さん(68)も「私みたいな年寄りが話すより、よっぽど若い人も興味を持ってくれますよ」と目を細める。
さらに深く
学生解説員による解説は、来年2月まで、毎週土曜の午後1~5時に希望者に対して行われる。昨年から県が始めた取り組みで、昨年の島根大に続き、今年は県立大の学生が担当することになった。
今年は坪井さん、綱井さんのほか、県立大2年の景山翔那(しょうな)さん(20)、1年の春山璃桜(りお)さん(18)の4人が協力する。事前に竹島の専門家から講義を受けるなど勉強会を重ね、解説に臨んでいる。
鳥取県出身の坪井さんは、子供のころからニュースで竹島について目にしたり、授業で学ぶ機会が多かったという。
「7月に大学で学生解説員を募集しているのを知り、さらに深く学んでみたいと応募した。解説員になるにあたって、竹島問題を調べるほど、この問題は一筋縄ではいかないとあらためて感じている」
香川県出身の綱井さんは「私はもともと領土問題に興味があった。募集を知って、日本の取り組みや韓国の主張をもっと具体的に知るチャンスだと応募した」と話す。
県竹島対策室の岩崎靖室長によると、県の調査で竹島問題を知らないという若い世代が増えているという。「大学生を通じて問題を周知することで、若者に関心を持ってもらえると考えた」
資料室の来館者も、平成30年度は約5千人、令和元年度は約6800人だったが、2年度は新型コロナウイルスの感染拡大もあり、約3800人に落ち込んだ。
岩崎室長は「竹島問題への関心が薄れているわけではないが、今後も継続して県民、国民に啓発を行いたい」と訴える。
小・中・高でも
学校現場でも、竹島問題に関する学習は広がっている。
島根県では平成21年度からすべての県内の公立小中学校・高校・特別支援学校で竹島学習が行われている。
全国でも文部科学省の学習指導要領の改訂により、竹島について「日本固有の領土」と指導するよう明記された。小学校では令和2年度から、中学校では今年度から、高校では来年度から社会などの授業で学習が行われる。
県教育庁教育指導課の担当者は「全国で竹島が固有の領土と指導されることはうれしく受け止めている」と話す。
学生解説員の綱井さんも言う。「私は竹島や領土問題に興味があったが、友人の中には『竹島という言葉は知っているけど、何が問題かよく分からない』という子もいた。問題が解決に至るよう、若い世代でも考えていきたい」
筆者:藤原由梨(産経新聞)