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イランは、いつまで耳をふさぎ続けるのか。自由と人権を求める国民の決死の要求から。国際社会の非難からも。
女優ら著名人を一時逮捕し、デモ参加者の公開処刑を行っても、課題は解決しない。
デモが表面上は沈静化しても、体制への反発と失望は、むしろ水面下で深まっている。
イラン当局は、弾圧は自らを弱体化させていると認め、国民と真摯(しんし)に向き合うべきである。
首都テヘランを旅行中だった20代の女性が頭髪を覆うヘジャブの着用が不適切だったとして風紀警察に拘束され、不審死を遂げた。これをきっかけにデモが始まって4カ月がたつ。
デモへの連帯は、ワールドカップに出場したサッカーの代表チームや最高指導者ハメネイ師の親族にも広がり、消防士や石油産業に従事する労働者も賃上げを掲げて街頭に繰り出した。
専門家は「問題はもはやヘジャブや女性の死亡ではない。体制が統治の正当性や影響力を失ったことだ」と指摘し、イスラム教の教えに至上の価値を置く「革命の意義」は失墜したと分析する。
追い込まれているのは体制の側であり、国際社会も非難を強めている。
国連経済社会理事会は2022年末、女性の権利を抑圧しているとしてイランを「女性の地位に関する委員会」から排除する決議案を採択した。決議はイランが表現の自由など女性の人権を抑圧し、委員会の目的や役割に著しく反した政策を取っていると指摘し、委員会からの即時排除を決めた。
決議の採択後、イランのイラバニ国連大使は「根拠のない捏造(ねつぞう)された主張であり、欧米による女性の権利の政治問題化を非難する」と述べたが、聴くに値しない。
イラン排除の決定には「問題解決にならない」といった反対の意見もあったが、委員会の使命や目的に反する政策を強行する国が居座り続けるようでは組織の信頼性にも傷がつく。当然の判断だ。
()タラネ・アリドゥスティさん(ロイター)
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イランが直ちにやめるべきは、国民に対する人権抑圧とともに、国際法違反の大義なき戦争を続けるロシアへの肩入れである。昨年末から元日にかけてのロシアによるウクライナ攻撃にも多数のイラン製無人機が使われた。ロシアへの支援は、イランの将来に禍根しか残さないと知るべきだ。
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2023年1月9日付産経新聞【主張】を転載しています