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公正取引委員会が米IT大手のグーグルに対し、独占禁止法違反(私的独占など)の疑いで審査を始めた。
同社の検索アプリが有利になるよう、スマートフォン端末メーカーに不当な働きかけをしていた可能性があるとみている。
グーグルは世界のネット検索市場で圧倒的なシェアを確保している。その強みを背景に自社アプリを優遇するように強いていたのなら問題だ。厳格な審査が欠かせない。
競合他社や取引先の事業を制限するような不正行為が確認されれば、厳しい行政処分を科すのは当然である。
欧米の規制当局は、巨大IT企業によるデジタル市場の競争を阻害する動きに厳格な姿勢を示している。日本でも徹底した取り締まりが求められる。
公取委によると、グーグルは一部のスマホ端末メーカーに対して、同社の複数の検索アプリをまとめて搭載し、スマホ画面上の目立つ位置に配置してもらう契約を結んでいた疑いがある。グーグルが提供する基本ソフト「アンドロイド」を使っている端末が対象だ。
国内のスマホ検索市場でグーグルのシェアは約8割を占め、2番手のヤフーの約2割を大きく引き離している。公取委の調査報告書でも、グーグルの検索アプリがアンドロイドを搭載したスマホに初期設定されている仕様を問題視している。
利用者にとっては、使い慣れたグーグルの検索アプリがスマホに初期設定されていることに違和感はないだろう。だが、グーグルが高いシェアをちらつかせ、自社に有利な設定を求めて競争が不当に制限されれば、消費者の利益にはならない。
グーグルは検索関連の広告収入が売上高の6割を占める。自社の検索アプリの初期設定を有利にする動きがこうした利益を支えているともいえる。
すでに欧州連合(EU)の欧州委員会は2018年、こうした取引が不当な競争制限にあたると判断し、同社に巨額な制裁金を科した。米国でも司法省が3年前に反トラスト法違反でグーグルを訴え、その裁判が今年9月から始まっている。
日本も欧米当局と足並みをそろえ、グーグルなど巨大IT企業の不正行為には厳しい姿勢で臨み、デジタル市場の健全な競争を促してほしい。
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2023年10月30日付産経新聞【主張】を転載しています