A woman walks past the logo of Uniqlo at Myeongdong shopping district in Seoul

A woman walks past the logo of Uniqlo at Myeongdong shopping district in Seoul, South Korea, October 22, 2019. REUTERS/Heo Ran

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日本企業が中国で事業展開する上での政治リスクの高さを、改めて印象づける処分である。

 

米税関当局が1月、中国新疆ウイグル自治区の強制労働をめぐる米国の輸入禁止措置に違反したとして、「ユニクロ」の男性用シャツの輸入を差し止めていたことだ。

 

ウイグル綿を生産する中国共産党傘下の団体が、ユニクロ製品の原材料製造に関わった疑いがあるためだとしている。米政府は昨年末、この団体が関与した綿製品の輸入を禁じている。

 

これに対してユニクロ側は、中国国外で原材料が生産されたとして、差し止め措置は不当と反論している。この決定に対しては「非常に遺憾」とコメントした。

 

両者の言い分は全く異なる。だが米当局は、強制労働に関わる製品を使っていないというユニクロ側の証明が不十分だとしているのだ。ユニクロ側に不服があるならば、米当局を納得させるだけの論拠を示さなくてはならない。

 

今回の措置から得られる大きな教訓は、ウイグル人弾圧を含む中国の人権問題が国際社会から強く非難される中、日本企業も対岸の火事ではいられなくなったという厳しい現実である。

 

ウイグル綿をめぐっては、その使用停止を表明したスウェーデン衣料品大手H&Mなどの企業が中国国内で不買運動にあい、中国政府も黙認している。

 

一方で使用が疑われれば米国の対中制裁に抵触しかねない。フランスの非政府組織(NGO)などもユニクロ仏法人を含む企業を当局に告発した。中国と欧米の双方にいい顔をすることは難しい。

 

ユニクロを展開するファーストリテイリングは、かねて政治問題への中立姿勢を掲げ、中国政府によるウイグル人弾圧についてもコメントを控えてきた。この点は同社に限らず、多くの日本企業にもいえることだろう。

 

だが、深刻な人権問題を眼前に企業が口を閉ざすことが許されるのか。欧米などでは企業の社会的責任が強く意識されている。日本企業においても、こうした要請に応える覚悟が求められよう。

 

日本企業が中国と欧米の板挟みで苦慮するのは、腰の据わらない政府の対中外交が招いた結果でもある。先進7カ国(G7)でウイグル問題への制裁行動を取っていないのは日本だけだ。旗幟(きし)を鮮明にすべきは当然である。

 

 

2021年5月21日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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