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尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域で中国海警局の船が徘徊(はいかい)し、4日には過去最長の112日連続となった。海上保安庁の巡視船が領海侵入しないよう見張っている。
海警船の尖閣周辺の航行は今年すでに計147日で、うち領海侵入は20日だ。過去最多だった昨年を上回るペースだ。
尖閣諸島は日本固有の領土である。中国政府は、1953年1月8日付の共産党機関紙「人民日報」が、琉球諸島を構成する島々の1つに尖閣諸島を挙げていたことを思い出すべきだ。
国連機関が周辺に海底油田がある可能性を指摘した後、1970年代になって中国は領有権を唱え出した。そこに一分の理もない。海警船は直ちに尖閣海域から出ていくべきである。
領海侵入した海警船が日本の漁船を追いかけまわす事態も起きている。2月には、中国中央軍事委員会傘下の海警局に武器使用を認める海警法が施行された。法執行機関の衣をまとった「第2海軍」の正体があらわになった。
加藤勝信官房長官は4日の記者会見で、海警船による領海侵入や接続水域航行について「極めて深刻な事態と認識している」とし、外交ルートで中国側に「(日本の)懸念を踏まえた行動をとるよう強く求めた」と語った。岸信夫防衛相は「力を背景とした一方的な現状変更の試みは断じて容認できない」と述べた。
言葉が空回りしていないか。日本は尖閣をめぐって何度も抗議してきたが、力しか理解しない中国は馬耳東風である。
海警船による執拗(しつよう)な行動は、純然たる平時でも有事でもないグレーゾーンの対日侵略がすでに進行中であることを示している。政府はしばしば「尖閣を断固守り抜く」というが、エスカレートする海警船の活動をもっと深刻にとらえなくてはならない。
このままでは、中国は不意を衝(つ)いて尖閣の島と海を奪いに来るかもしれない。台湾有事の際に、軍事的要衝である尖閣の占拠をねらってくる恐れもある。
海警船を追い出し、尖閣侵攻を防ぐには外交、防衛両面の手立てが必要だ。前提として自衛隊と海保の増強が欠かせない。自衛隊法や海保法の改正問題のみに走るのではなく、実際に尖閣を守るための予算確保と人員、艦船・航空機などの増強を急ぐべきである。
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2021年6月5日付産経新聞【主張】を転載しています