ウズベキスタンで開かれた上海協力機構(SCO)首脳会談で
中国の習近平国家主席(右)に話しかけるロシアのプーチン大統領
=9月16日(ロイター)
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中国の習近平国家主席とプーチン露大統領が、ロシアのウクライナ侵略後では初めての対面での首脳会談を行った。
習氏は国際社会の制裁を受けるロシアとの協力関係を維持する姿勢を示し、プーチン氏は台湾併吞(へいどん)を狙う中国の立場を支持する考えを伝えた。
力による現状変更に向けた振る舞いが非難される両国首脳による危うい結託である。日米欧などの民主主義国は、一段と強まった中露の連携を警戒し、厳しく対峙(たいじ)しなければならない。
首脳会談は中露主導の上海協力機構(SCO)首脳会議が開かれたウズベキスタンで行われた。
プーチン氏の思惑は明白だ。中国と結束を強めれば、国際社会で孤立しているわけではないと内外に誇示できる。これに応えて習氏は「中国はロシアとともに大国の役割を体現し、牽引(けんいん)的役割を果たす」と述べた。
習氏の言辞は心得違いも甚だしい。プーチン氏はウクライナ情勢について「中国の疑問と懸念は理解している」とも語っている。習氏が大国の指導者を自任するならばプーチン氏に蛮行をやめるよう促すのが本来の役割だ。だが、16日にプーチン氏と会談したインドのモディ首相が「現代は戦争の時代ではない」と侵攻停止を公然と求めたようなことはなかった。
習氏は会談で、「核心的利益に関わる問題で相互に強力に支持し合い、貿易、農業の実務協力を深化させたい」とも語った。中国の核心的利益は台湾やウイグル、チベットなどであり、ロシアの核心的利益はウクライナである。
習氏にすれば、プーチン氏が台湾問題で「米国や従属国による挑発」を非難したのは大きい。つまり、習氏は台湾問題などで共闘するためロシアを支持し、協力していくことを公言したに等しい。
その結果、東アジア情勢が不安定化する懸念がさらに高まっていることは看過できない。
首脳会談に合わせるように、中露海軍が15日、太平洋海域で艦砲発射訓練などを行う「合同パトロール」を始めた。同日には中国海軍の測量艦が鹿児島県屋久島南方の日本領海にも侵入した。
いずれも、台湾やウクライナを支援する日米などを威嚇する狙いがあるのは明らかだ。岸田文雄政権は、ウクライナと東アジアが密接につながっている現実を一層厳しく認識しなければならない。
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2022年9月18日付産経新聞【主張】を転載しています