ICBM

18日、平壌の平壌国際空港で実施された大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」の発射訓練(朝鮮中央通信=共同)18日、平壌の平壌国際空港で実施された大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」の発射訓練(朝鮮中央通信=共同)

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北朝鮮が、大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発を日本海に向けて発射し、北海道渡島大島の西約200キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾した。

 

米国が日本にさしかける「核の傘」を壊そうという狙いを含んでいる。岸田文雄首相は反撃能力整備に加え、核抑止態勢の再点検、強化を急がなければならない。

 

北朝鮮のICBMが日本のEEZ内に着弾したのは昨年11月の「火星17」以来だ。北朝鮮メディアは、新設の「ミサイル総局」傘下部隊によるICBM「火星15」の即応発射訓練だと報じた。実戦配備を宣伝したいのだろう。

 

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新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験成功に貢献した兵士と記念撮影する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(中央右)と娘(同左)(撮影日不明、2022年11月27日公開 © KCNA via Reuters)

 

通常より高い角度で発射するロフテッド軌道だった。防衛省は、通常軌道であれば射程は1万4千キロ超で、米国全土が攻撃対象になり得るとの見方を示した。

 

北朝鮮の弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会決議違反で日本や世界の安全を脅かす暴挙だ。日米韓などが非難したのは当然だ。北朝鮮は直ちに核・弾道ミサイル戦力を放棄すべきである。

 

韓国大統領府は国家安全保障会議(NSC)で、深刻な食糧難にある北朝鮮では餓死者が続出していると明かした。国民の生命、生活を無視して核・ミサイル戦力強化に走るのは金正恩朝鮮労働党総書記の独裁体制を守りたいからだろう。「民主主義」「人民」を国名に冠する資格があるのか。

 

このような危険で非道な隣国が存在する。岸田政権が抑止力向上のため、反撃能力保有を閣議決定したことは正しかった。できるだけ早く反撃能力の運用を可能にしてもらいたい。ただし、それで十分とはいえない。

 

火星15は液体燃料式ミサイルだが、移動式発射車両(TEL)から発射されるため発見は難しい。さらに北朝鮮は、迅速に発射可能な固体燃料式のICBMを開発中だ。北朝鮮が核によって米国の大都市を「人質」にとったと考えれば、米国の「核の傘」に依存する日韓への軍事攻撃をためらう理由が大きく減る。岸田首相は核抑止態勢を強化しなければ国民を守れないと気づくべきだ。「核共有」の議論も排除すべきではない。

 

岸田首相がICBM飛翔(ひしょう)中に耳鼻咽喉科のクリニックに通ったのは甚だ疑問だ。船舶などに被害が出ていたら申し開きできまい。もっと緊張感を持つべきである。

 

 

2023年2月20日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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