日本記者クラブ主催の党首討論会で記念撮影に応じる各党党首ら
=6月21日午後、東京都千代田区(鴨志田拓海撮影)
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参院選の舌戦が始まった。どの候補者も、どの政党も有権者の支持を集めようと政策や政見を熱心に訴えている。当然の努力だが、指摘しておきたいことがある。
参議院は「良識の府」といわれる。ならば、それに値する人物を選びたい、ということだ。候補者や政党は、名実ともに「良識の府」と呼ばれる参院をつくる自覚を持ってほしい。
6月15日に閉会した今年の通常国会で、参院が衆議院に後れを取った問題があった。
中国における深刻な人権状況に疑義を呈する決議を見送ったことである。
衆院は2月1日に、「中国」の文言を避けるなど腰の引けた面はあったものの、新疆ウイグル自治区やチベット、南モンゴル、香港などの「深刻な人権状況」を「国際社会の脅威」とみなす決議を賛成多数で採択した。
欧米諸国の多くの議会は対中人権決議をしてきた。中国の隣国日本の国会は決議を先延ばししてきた。衆院によって、ようやく日本の国会の意思を内外に示せた。
一方、参院では衆院とは異なる文面にしようと調整が行われたが、いつのまにかうやむやになってしまった。ロシアによるウクライナ侵略が始まったからと言い訳するとすれば、それは理由になり得ない。今回の改選組、非改選組を問わず、参院議員として恥ずかしいと思わなかったのか。
参院議員は衆院議員と違って任期途中の解散に伴う失職がなく、6年間の任期が保証されている。より長い在職を通じて、識見や専門性を生かし、政策や法案などを議論、議決することが期待されている。
深刻な人権侵害問題に取り組むことは、民主主義国の国会の責務であり、外国への内政干渉には当たらない。ましてや、日本に軍事的脅威を及ぼす中国の問題だ。虐げられた人々や日本国民の立場を尊重する参院がほしい。
選挙後の国会で、参院が直ちに取り組むべきは、対中人権決議の採択である。
憲法改正問題でも、参院は国民の期待に応えてこなかった。衆参各院に常設の憲法審査会があるが、憲法改正の中身に関する審議を比べれば、衆院を上回ったとは言えない。それでいいのか。
今回の参院選を「良識の府」を取り戻す契機にしたい。
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2022年6月23日付産経新聞【主張】を転載しています