フィジーの首都スバで開かれた外相会議で、
バイニマラマ首相(右)と登壇した中国の王毅国務委員兼外相 (AP)
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南太平洋への中国の軍事的な進出は、「自由で開かれたインド太平洋」への挑戦であり、日本と米国、オーストラリアが中心となって、阻止しなければならない。
中国の王毅外相は南太平洋の島嶼(とうしょ)国など8カ国を歴訪中、訪問先のフィジーで外相らとオンライン会議を開催した。中国が提案した安全保障面での連携強化を掲げた協定締結は異論が出て合意できなかった。
だが、習近平国家主席が「運命共同体を協力して構築したい」と語る通り、中国が各国との安保強化をあきらめるとは思えない。今後、個別の切り崩しにも出てこよう。警戒を緩めてはならない。
太平洋島嶼国14カ国の排他的経済水域(EEZ)は広大だ。ルールを無視する中国の海洋進出を許してはならない。軍事的にも極めて重要な位置にある。キリバスは米インド太平洋軍司令部のあるハワイに、マーシャル諸島などは米軍基地のあるグアムに近い。
中国は南シナ海にいくつもの人工島を造成し、滑走路などの軍事施設を造った。南太平洋で拠点を構築すれば、台湾有事を含め、安全保障環境に大きく影響する。
中国とソロモン諸島は4月、安全保障協定を結んだ。中国軍駐留や艦船の寄港、警察の派遣を可能とする内容だと伝えられる。
王毅氏は最初の訪問先となったソロモンで「軍事基地をつくる気はない」と述べた。だが、協定の中身は公表しておらず、額面通り受け取るわけにはいかない。
突然の協定締結に日米豪などは浮足立ったが、豪外相がフィジーに飛ぶなどして巻き返した。フィジーは米主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」への参加を決めた。
太平洋島嶼国は、豊かな漁場があっても国際市場から遠く、気候変動や自然災害に脆弱(ぜいじゃく)で、外国からの支援は不可欠だ。
さきに東京で開催した日米豪印の協力枠組み「クアッド」首脳会合で、気候変動対策や経済状況の向上、違法漁業監視など、島嶼国への協力を約束したのは適切だった。着実に実行に移したい。
日本は1997年以降、3年に1度、島嶼国首脳を招いて「太平洋・島サミット」を開催し、民主主義や法の支配という普遍的価値の共有を目指し、関係を強化してきた。米豪と連携し、さらなる支援策を講じていくべきだ。
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2022年6月2日付産経新聞【主張】を転載しています