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東京都への緊急事態宣言発令などにより、7月23日に開幕する東京オリンピックは首都圏の1都3県と北海道、福島県では無観客で開催されることになった。
大変、残念である。一方で宮城県で行われるサッカーは、定員50%以内で最大1万人の観客上限を維持して開催する。
茨城県はカシマスタジアムで行うサッカーについて、昼間の試合のみ、県内の学校連携チケットによる観戦を可とした。大いに参考にすべき決断である。
この方式であれば、県外移動を伴わず、引率教員による直行直帰の徹底も図ることができる。一般観客の入場がなくなった広いスタンドでは、十分に人と人との間隔を取ることもできる。
世界最高水準のスーパーコンピューター「富岳」の分析では、国立競技場に観客1万人を収容した場合でも、マスク着用などの感染対策を取れば新規感染者を1人未満に抑えられることが分かっている。感染のリスクは、限りなくゼロに近い。
満員の観衆による大歓声と拍手という理想の環境を世界から集まるアスリートに提供することはかなわなくなったが、少年少女の真剣な視線は、必ず選手らの刺激となり、支えとなるはずだ。
菅義偉首相は8日、東京五輪について「未来を生きる子供たちに夢と希望を与える歴史に残る大会を実現したい」と述べた。
それなら、学校、学級、部活動単位の観戦に、道を開くべきである。少なくともその努力、検討は惜しむべきではない。
菅首相はまた、緊急事態宣言について「ワクチンの効果がさらに明らかとなり、病床の状況などに改善がみられる場合には、前倒しで解除することも判断する」とも述べている。
この場合の「解除」は、必ずしも一律を前提とするものではあるまい。例えば、状況の改善に応じて、無観客とした自治体の五輪会場で、学校招待の形で一部スタンドを開放する。
そうした柔軟な策も考慮にいれてほしい。
「観客がいてもいなくても、選手には関係ないではないか」とする声もある。あまりに選手の心を知らぬ妄言である。数は少なくても、スタンドに観客がいる。そんなささやかな希望を、最後まで捨てたくない。
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2021年7月11日付産経新聞【主張】を転載しています