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自国領土の保全について一歩も引かぬ姿勢を示し続けるのが公人の義務である、と改めて強調したい。
日本国際貿易促進協会(河野洋平会長)の訪中団に参加した沖縄県の玉城デニー知事が帰国した。だが、中国滞在中、玉城氏は沖縄の島である尖閣諸島(石垣市)の問題を取り上げなかった。極めて残念である。それで沖縄の知事といえるのか。
本紙は先に「主張」で玉城氏に対し、訪中時は中国政府要人らに尖閣が日本の領土であると説き、領海侵入などの挑発行為をやめるよう抗議すべきだと訴えた。
中国海警局船による領海侵入に大多数の県民が危機感を抱いていることは世論調査から明らかだ。こうした県民の声を直接伝える機会をなぜ生かさなかったのか。尖閣をめぐり、日本の、沖縄の立場を伝えなかった責任は重い。
玉城氏は7月5日、河野氏らとともに中国共産党序列2位の李強首相と会談した。
関係者によれば、玉城氏は事前に用意した紙を読み上げる形で、新型コロナウイルス禍で停止した沖縄と中国間の空路の直行便回復などを求めた。李氏は関係当局に検討を指示する考えを示した。
会談後、玉城氏は尖閣に触れなかった点について「特に話は出なかったので、私からもあえて言及しなかった」などと述べたが、まるでひとごとである。
尖閣を行政区域とする自治体のトップが直接抗議することは大きな意味を持つ。
李氏は習近平国家主席の腹心だ。抗議していれば、尖閣周辺での挑発行為を一切許さないという沖縄の強い意思が最高指導者の習氏に伝わったはずだ。
取り上げなかったことで、中国の海警局船による領海侵入に玉城氏や沖縄県は甘い、と見なされかねない状況をつくってしまったといえる。
中国側は玉城氏を含む訪中団を厚遇し、友好ムードを演出した。沖縄の米軍基地問題で、県は日本政府と対立し続けているだけに、台湾有事への対応などで、日本の世論を分断したい思惑があるのではないか。
玉城氏は沖縄を含む日本の平和と、日本固有の領土である尖閣を守るため、中国政府に対し、不当な行為をやめよと声をあげなければならない。
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2023年7月9日付産経新聞【主張】を転載しています