~~
南西諸島防衛のために抑止力の向上が求められている中で、沖縄県の玉城デニー知事が自衛隊の行動や増強に批判的な言動を繰り返している。
那覇市に拠点を置く陸上自衛隊第15旅団の師団規模への増強方針が報じられると、玉城氏は「過重な基地負担が増える」と不満を表明した。
11月に行われた日米共同演習「キーン・ソード」では、自衛隊が日本最西端の与那国島(沖縄県)に16式機動戦闘車を空輸し、県道を走る訓練を実施した。玉城氏は沖縄防衛局に中止を求め、訓練後には「誠に残念だ」とするコメントを発表した。与那国町長が訓練の必要性を認めたのとは対照的だ。玉城氏は演習で民間が利用する港などが使われたことに「県民にさまざまな不安を生じさせる」と不快感さえ示した。
防衛の最前線沖縄の知事として見識に欠けるのではないか。自衛隊と隊員の努力をねぎらう言葉が出てこないのは本当に残念だ。玉城氏は自衛隊の足を引っ張る一連の発言を撤回し、自衛隊の増強や訓練に理解を示すべきである。
玉城氏は、それらが尖閣諸島を含む沖縄県の島々と県民を守る抑止力向上を目的としたものだと理解しなければならない。
玉城氏は「自衛隊の能力を強化するなら、その分の米軍の負担は減らすべきだ」とも述べた。だが、軍備拡張に突き進む中国と対峙するには、日米同盟の抑止力は欠かせない。
玉城氏はこれまで、日米安保について「必要性は理解する」と語ってきた。しかし、今年9月の知事選で共産党などの推薦を受けて以来、革新色が強まったという指摘もある。玉城氏を支える「オール沖縄」勢力は自衛隊増強などに反対している。
玉城氏が、安全保障環境の悪化を直視しない革新勢力に迎合するようでは県民の生命財産を預かる知事の職責は果たせまい。
むろん防衛政策は国の専権事項だ。ただし、国民保護法は住民への避難指示や救援活動は都道府県の役目だと規定している。玉城氏には、住民の避難体制を万全にする責任がある。それには自衛隊との緊密な連携も求められる。
一方で国も、県民に自衛隊増強や訓練の必要性を丁寧に説明すべきだ。国と県が連携してこそ抑止力が高まり、平和を守れる点を国と県は肝に銘じてもらいたい。
◇
2022年12月10日付産経新聞【主張】を転載しています