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「自由で開かれたインド太平洋」実現に向け、日英両国が緊密な安全保障協力を重ねていくことを内外に発信する重要な機会になる。
英国防省が、新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群をインド太平洋地域に初めて派遣し、日本や韓国に寄港すると発表した。自衛隊と英軍の共同訓練の準備が進んでいる。
空母群は5月下旬にポーツマス港を出発する。インドやシンガポールなどに寄港後、南シナ海を通過し、早ければ7月に日本の佐世保か横須賀に入港する。
安全保障上、世界で最も危うい海は、中国周辺の東・南シナ海である。尖閣諸島を含む沖縄は東シナ海に接し、南シナ海を日本のタンカーが通行している。
日本と価値観を共有し、準同盟関係にあるといわれる英国の艦隊が、これらの海を通って日本に寄港することを歓迎したい。寄港に最大限の便宜を図るべきだ。
ジョンソン英首相は空母群派遣の発表に際し、「世界で最も重要なインド太平洋地域に海軍資産をさらに配備し、シーレーンを守る」と強調した。
覇権志向を強める中国の強引な海洋進出を、日英両国が手を携えて抑止し、台湾、香港問題でも連携していくべきだ。
英国は朝鮮戦争で国連軍として参戦した。今も朝鮮国連軍の一員で、在京英大使館の武官は、横田の国連軍後方司令部の連絡将校を兼ねている。日英は北朝鮮問題でも協力を深めたい。
空母群は空母、駆逐艦2隻、対潜フリゲート艦2隻、潜水艦などで構成される。さらに、米海軍駆逐艦とオランダ海軍フリゲート艦が随伴する。空母には最新鋭ステルス戦闘機「F35B」が搭載されるが、英軍だけでなく米海兵隊のF35Bも含まれる。
英米が事実上主導する北大西洋条約機構(NATO)軍が展開する意味合いもある。
空母群は、日米英合同の訓練や、オーストラリア、インドとの訓練も重ねる計画だ。
英国は、3月公表の新国家戦略で「インド太平洋への関与拡大」を打ち出し、日米豪印4カ国の安全保障協力の枠組み「クアッド」への参加意欲を示している。日本は、英国のインド太平洋地域の秩序維持への関心を評価し、「クアッド」参加を後押しすべきだ。
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2021年5月4日付産経新聞【主張】を転載しています