イスラエルから感謝状を贈られたへブライ文化研究家、
小辻節三氏の次女、メリーさん(右)と山田純大(左)=東京都内
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5月23日付の毎日新聞外信面の囲み記事に目が留まった。イスラエルの国会議員と駐日大使が22日、東京都内の介護施設を訪問した。ヘブライ文化研究者の小辻節三(こつじせつぞう)の功績をたたえて、次女の暎子(てるこ)さん(91)に感謝状を贈るためだ。俳優の山田純大(じゅんだい)さんの尽力で実現したという。
第二次世界大戦中、駐リトアニア領事代理だった杉原千畝(ちうね)が発行した「命のビザ」は広く知られている。数千人のユダヤ人がナチス・ドイツの迫害を逃れ、日本にたどりついた。強制送還の恐れもあった彼らのために奔走し、米国などに送り出したのが小辻である。スパイ容疑で拷問されたこともある命がけの活動だった。
米国の大学に留学した山田さんは、現地で入手した小辻の自伝を手がかりにゆかりのある人々を訪ね歩いた。平成25年に刊行した『命のビザを繫(つな)いだ男』によると、京都の神官の家に生まれた小辻は聖書と出会い、米国でヘブライ語を学んでユダヤ教に行き着いた。
満鉄の松岡洋右総裁に請われて満州に赴き、現地のユダヤ人社会と深いかかわりを持つ。やがて外相として日独伊三国同盟を締結する松岡は陰ながら小辻のユダヤ人保護を手助けする、意外な事実も記されている。
74歳で亡くなった小辻はエルサレムの墓で眠る。家族にこんな言葉を残した。「百年以内に誰か、自分をわかってくれる人が現れるだろう」。遠くウクライナから避難民を受け入れている今、改めて顕彰すべき人物である。
ところで山田さんの父親、杉良太郎さんは大スターであると同時に、慈善活動家としての顔を持つ。コロナ禍により矯正支援施設を訪問できなくなった際、代わりの企画として受刑者に本を推薦したことがある。選んだのはもちろん息子の著作だった。
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2022年5月24日付産経新聞【産経抄】を転載しています