「もし『笑顔』という競技があれば、彼女たちは表彰台のトップに立つだろう」。英国の新聞からこうたたえられたのが、カーリング女子の日本チーム、LS北見である。「キープスマイル」を合言葉とし、昨年の平昌(ピョンチャン)五輪で銅メダルを獲得している。
ゴルフの全英女子オープンで、「スマイリング・シンデレラ」のニックネームを付けられた渋野日向子選手(20)も当然、表彰台に立つ資格がある。笑顔の力で初優勝まで果たしてしまった。1977年の樋口久子さん以来、42年ぶりの日本勢のメジャー制覇という偉業である。
平昌五輪では、LS北見のメンバーが休憩時間にいちごをつまむ「もぐもぐタイム」が話題となった。渋野選手がプレーの合間にムシャムシャと口にしていたのは、おにぎりや大好物の駄菓子である。
ギャラリーとも気軽にハイタッチを交わしていた。昨年プロテストに合格したばかりの新人が、海外初遠征で首位争いを繰り広げているとはとても思えない。「こんな選手見たことない」。現地実況でも驚きの声が上がっていた。優勝スピーチでは英語でつっかえ、自分で噴き出す様子に大きな笑いが起こった。
「史上最悪のスピーチね」と照れながら、観客の心をつかんでいく女子テニスの大坂なおみ選手を思い出す。優勝した全米、全豪大会では、ピンチに陥ると、無理に笑顔を作って動揺を抑える姿も印象的だった。渋野選手も、意識的に笑顔を振りまき、プレッシャーと戦っていたのだろう。
今回の快挙で、渋野選手は世界中の選手から追われる立場になった。「黄金世代」と呼ばれるライバルたちの目の色も変わる。シンデレラ物語はめでたしめでたしで、ひとまず終わった。次の物語が、すぐに始まる。