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日本の最新鋭潜水艦の2番艦が防衛省に引き渡された。リチウムイオン電池を搭載して、水中での行動能力が大幅に向上している。
「たいげい型」2番艦として
3月20日に川崎重工業の神戸工場で防衛省に引き渡されたのは最新鋭の潜水艦「はくげい」だ。戦後の日本の海上自衛隊の潜水艦は「おやしお型」から「そうりゅう型」、そして最新鋭の「たいげい型」へと進化している。「はくげい」は2022年春に三菱重工業から防衛省に引き渡された潜水艦「たいげい」の兄弟艦で、2番艦にあたる。「たいげい」とは、大きなくじら(大鯨)を意味し、「はくげい」は白いマッコウクジラ(白鯨)を意味する。
「はくげい」は全長84メートル、全幅約9.1メートル、深さ10.4メートル、基準排水量3000トンで、ディーゼルエンジン型の潜水艦として国内最大級。海上自衛隊の潜水艦は三菱重工業と川崎重工業が交互に建造を担い、「はくげい」は川崎重工が戦後建造した30隻目の潜水艦にあたる。
リチウムイオン電池搭載での高性能艦
「はくげい」には兄弟艦「たいげい」にも搭載されているリチウムイオン電池が搭載されていて、ディーゼルエンジンとリチウムイオン電池を組み合わせたディーゼル電気推進機構を採用している。リチウムイオン電池は従来の鉛蓄電池より大きな容量を持ち、水中航行能力が高くなり、潜航時間も大幅に延ばすメリットがある。パワーアップしたことで、潜水艦が最も脆弱になる「浮上しての充電」の頻度が少なくなる。原子力潜水艦よりも静粛性にも優れ、探知されにくいステルス性能も向上している。水中音波で物体や距離を探るソナー装置の探知能力も向上していて、世界有数の高性能艦とされる。
列島周辺の監視・警戒に必要
近年、日本の近海では中国、ロシアや北朝鮮の軍事活動が活発化する中、常時継続的な情報収集と警戒監視態勢が求められている。日本の潜水艦は通常型のディーゼルエンジンの潜水艦としては大型だが、米国やロシアの原子力潜水艦に比べればその全長は半分程度である。なお、2022年12月に発表された日本政府の「防衛力整備計画」では、長距離の垂直ミサイル発射システム(VLS)を搭載した攻撃力強化の次世代型潜水艦の開発も盛り込まれている。
日本沿海は複雑な海底となっている箇所もあり、大型の原子力潜水艦では水中航行が難しい場所もある。日本の潜水艦は日本特有の海底地形を熟知した上で海中での隠密任務を遂行する。
日本は2010年の防衛計画の大綱(防衛大綱)で潜水艦の定数を22隻に増強する計画を掲げた。これは上記の日本海や東シナ海での監視・警戒態勢が急務なためで、潜水艦の任務もより重要になる。「たいげい型」潜水艦は全6隻の配備を計画し、順次入れ替えを予定している。
「はくげい」は広島県呉市の海上自衛隊呉基地の第1潜水隊群に配備される。
女性隊員の乗務にも対応
「はくげい」には女性自衛官の乗船を想定した設備が施されている。すでに「たいげい」にもある設備だが、居住エリアやシャワー室には女性隊員専用の設備が用意されている。
筆者:海藤秀満(JAPAN Forwardマネージャー)
(参考)
川崎重工のプレスリリース: https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20230320_2.html
海上自衛艦の引渡式: https://www.mod.go.jp/msdf/operation/hikiwatashi/r3/