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日本郵政と楽天は12日、資本・業務提携を発表して、衝撃が走った。日本郵政が楽天の第三者割当増資に応じ、1500億円を出資する。これにより日本郵政は楽天の株式の8.32%を握る。両社は物流、携帯電話事業、金融など幅広い分野で提携を強化する。ビジネス戦略としてみれば、提携のシナジー(相乗)効果を期待して評価もできよう。しかし、そこに潜む重要な問題を見逃してはならない。

 

 

政府の過半出資会社の出資には公正さが必要

 

第一に、日本郵政は政府出資が過半を占める会社であることだ(株式の56.87%を政府と地方自治体が保有)。その親会社の下に、郵便、郵貯、簡保の3事業会社が置かれている。個々の事業会社が事業提携をするのならともかく、政府出資が過半の親会社が特定企業に巨額の出資をするには特に公正さが求められる。昨年末には事業会社の日本郵便が楽天と物流分野での事業提携を発表したばかりだ。そのわずか2カ月半後に親会社による資本提携にまでのめり込んでいる。

 

今回、日本郵政も含めた3社からの資金調達は約2400億円に上るが、その大部分は日本郵政のメリットに直結しない携帯電話事業に充てるという。携帯電話事業については、菅政権肝煎りの政府主導による携帯料金の引き下げで、業界最後発の楽天のダメージは特に甚大だ。その救済のために資本提携すると思われても仕方がない。それでは国民の財産を特定企業につぎ込むのも同然ではないか。

 

 

中国への個人情報流出の恐れも

 

第二の問題はもっと深刻だ。中国IT大手テンセント(騰訊)の子会社から約660億円の出資を楽天が受け入れる。

 

テンセントについては、トランプ米政権の末期、その人気アプリWeChat(ウィーチャット、微信)のダウンロード禁止の大統領令が出されたほか、中国人民解放軍と関係が深い企業として米国人の投資禁止の対象にすることも一時検討された。これらはいずれも米国顧客の個人情報が中国政府に流出するとの疑念が背景にあった。

 

中国国内では、WeChatによって約10億人の国民の会話、行動、購買履歴を監視できるようになっている。また中国共産党政権はアリババとともにテンセントに対しても、独禁法などの手段を使って急速に統制を強めつつある。テンセントも中国政府への協力を表明している。

 

こうしたテンセントが楽天に出資して、今後ネット通販などでの協業も検討しているというのだ。楽天は電子商取引のみならず物流も含めた日本のプラットフォーマー(基盤提供事業者)だ。仮にもテンセントが影響力を行使して、楽天が持つ個人情報の扱いや物流インフラに影響が及ぶことがあってはならない。これは日本の経済安全保障にもかかわる重大問題だ。日本政府も事の重大さを認識して、責任ある判断をすべきだ。ビジネスの目でだけ追っていると大きな落とし穴がある。

 

筆者:細川昌彦(国基研企画委員・明星大学教授)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第774回(2021年3月15日)を転載しています

 

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