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中国の軍事活動拡大により、台湾海峡の緊張が高まっている。台湾国防省の発表によると、中国人民解放軍の軍用機が台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に侵入した回数は、2021年1月1日~8月8日に計125日、367機に達した。台湾空軍は、戦闘機を常時上空待機させる「空中哨戒」で対応しているほか、地上から無線警告を発し、地対空ミサイルのレーダーシステムで追跡、監視を行っている。東シナ海、宮古海峡(沖縄本島と宮古島の間)及び台湾東部でも、中国軍機は日本や台湾のADIZに侵入する回数が急増している。
国際社会はこうした中国の台湾に対する軍事威嚇行為に大いに反発している。年初以来、日米両国や欧州諸国が一連の首脳会議で台湾海峡の平和と安定を呼びかけ、台湾問題への注目が高まった。こうしたなか、日米両国はこの地域の平和と安全を守るために何をすべきか、以下の政策を提言する。
多国間軍事演習に台湾を招け
1、日米軍艦は台湾海峡を共同通航せよ
バイデン政権の発足以来、米軍艦は台湾海峡を7回通過した。「航行の自由作戦」で中国を牽制する狙いである。カナダ、フランス、オーストラリア、英国も米国と同じことを行っている。日本の海上自衛隊の艦艇が米軍艦と共に台湾海峡を「無害通航」する「航行の自由作戦」を実施すれば、戦略的に大いに意義がある。
2、合同軍事演習に台湾を招待せよ
中国の軍事的拡張を牽制するために、近年、インド太平洋地域で、日米を含む各国が合同軍事演習を行うケースが増えているが、台湾は招待されたことがない。軍事演習の準備段階などに台湾関係者が招待されれば、台湾と各国の交流の機会となる。
3、日台防衛当局の連絡体制を構築せよ
日本と台湾は、中国人民解放軍の軍用機による挑発的行為に対して、年間でそれぞれ数百回もしくは1000回以上のスクランブル(軍用機の緊急発進)で対応している。また、東シナ海の上空で、台湾の空軍は航空自衛隊がスクランブルをかけるより先に300カイリ(東経121~123度)の範囲で空中哨戒をしている。中国人民解放軍の軍用機はさらに日本へ向かう。同じ時間帯に米中台日の軍用機が上空にいる可能性もある。日台防衛当局間には連絡メカニズムが欠如し、万が一、空中で衝突が起きた際に、どう連絡すればよいのか。ネットワークが大事なので、防衛当局が直接対話できるように、台湾にいる日本の防衛駐在官を現役自衛官にしてほしい。
バシー、宮古海峡の監視強化も必要
4、バシー海峡と宮古海峡の監視を強化せよ
台湾では潜水艦の自主建造計画が進んでおり、早ければ2024年に試作艦進水とされている。しかし、潜水艦の就役までは、かなり時間を要する。台湾海軍が周辺地域の海洋安全確保の役割を分担できるようになるまで、日米両国は、バシー海峡(台湾とフィリピンの間)、宮古海峡における中国人民解放軍の行動の警戒と監視を強化する必要がある。
筆者:林彦宏(国防安全研究院(台湾)准研究員)
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国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第819回(2021年8月16日)を転載しています