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高級ブドウ「シャインマスカット」の苗木を許可なく販売目的で保管したとして、警視庁は28日、種苗(しゅびょう)法違反(育成者権の侵害)容疑で、愛媛県西条市の会社員の男(34)を書類送検した。日本で開発された人気の高いブランド果実などの農産物が海外に流出し、無断栽培されている実態は、これまでも相次いで確認されており、国内外の市場に出回って日本の農産物と競合するなど、大きな問題に発展している。国は種苗法を改正して海外への不正な持ち出しを禁じ、警察も摘発に乗り出すなど、日本の財産である新品種の保護に国を挙げて取り組んでいる。
日本独自のはずが…
大粒の実がエメラルドグリーンに輝く高級ブドウ「シャインマスカット」。糖度が高く、皮ごと食べられる人気の高いフルーツだ。贈答品にも用いられ、1房数万円以上するものもある。
平成18年に誕生した品種で、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)が長年かけて開発した努力の結晶でもある。
だが、この品種が29年ごろから中国で広く栽培されているのが確認された。農林水産省の調査では、「陽光バラ」「香印翡翠(ひすい)」などの中国名で販売されていたほか、韓国内でも栽培、販売されていることが判明。農水省の担当者は「海外で産地化されることで生産者らが本来得られる利益が失われてしまう」と懸念を示す。
種苗法の改正
日本で開発された果物や野菜の種苗は、開発者に25年か30年の「育成者権」が認められているが、これまで海外に持ち出された場合の規定は存在せず、野放しになっていた。
実際、昨年7月の農水省などの調査では中国・韓国のインターネットサイトで日本で開発された品種と同名か別名の種苗が多数販売されていることを確認。イチゴ10品種、ブドウ4品種など計36品種にも上った。
日本品種のイチゴ「章姫(あきひめ)」「レッドパール」は、韓国で無断で栽培され、今では韓国内のイチゴ栽培シェアの8割以上を占めている。一度海外に流出すれば生産や販売を止めることは容易ではなく、輸出している生産農家にとっても大きなダメージとなる。
登録品種の海外流出を防止するため、国は種苗法を改正し、今年4月に施行。これにより、許諾なしに指定された地域以外で栽培したり、無断で海外に持ち出したりした場合は、生産・販売の差し止め対象とすることが可能となった。
DNA鑑定に希望
ただ、流出阻止にはもう一つクリアさせなければならない問題があった。実際に同一品種かどうかを調べる時間の短縮だ。これまで農研機構などが栽培環境を同一化した状態で栽培し、育成状況を比較した上で鑑定していたため、シャインマスカットでは鑑定に2年もかかっていたという。
そこで警視庁は、今回の摘発にあたりDNA型鑑定を導入。登録された品種のDNA型を元にした鑑定を行うことで鑑定期間を14~20日間までに短縮させた。「今後はDNA型鑑定が主体になっていくだろう」と捜査関係者。今後は農水省と連携し、DNA型鑑定体制の強化を進める。
また、農水省は、育成権を持つ人に対し、主要な海外市場や模倣リスクが高い国での品種登録出願を推奨。出願経費の支給支援も行うなど、国を挙げての品種保護に取り組んでいる。