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海上自衛隊と米海軍の共同訓練が今年に入って急増している。昨年1~5月に実施した回数は8回、一昨年の同期間は9回だったのに対し、今年1~5月の実施回数は日米が参加する多国間訓練を含め23回と、例年に比べ突出。2月に中国海警法が施行されるなど、尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる緊張の度合いが高まる中、即応性を強化し、中国を牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。
岸信夫防衛相は4日の記者会見で、中国海警局の船による尖閣諸島周辺の接続水域での連続航行が過去最長となったことに関し「海軍艦艇の恒常的な活動のもとで、海警の船舶が尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返している」と非難した。
海警には海上保安庁が一義的に対応しているが、尖閣諸島から北へ約90キロの北緯27度線付近では中国海軍の艦艇が常時航行し、尖閣周辺の動きに目を光らせている。海警は中国最高軍事機関の中央軍事委員会の指揮下に入っており、海軍との一体化が進んでいる。
海自が今年に入って日米共同訓練の回数を増やしている背景には、中国が着実に圧力を強めてきていることへの警戒感がある。
特に今年は米空母との共同訓練を重点的に行っており、1月には「セオドア・ルーズベルト」と沖縄県の沖大東島周辺で、5月には「ロナルド・レーガン」と沖縄東方の海域で訓練を実施し、プレゼンス(存在感)を示していた。
尖閣諸島をめぐる緊張が高まる中、米軍は2月に極めて異例な単独訓練も行っている。同月17日に米軍輸送機が尖閣上空を飛行し、近海に物資を投下した。政府関係者によると、米軍兵士も降下する予定だったが、悪天候のために降下は見送られた。
中国は尖閣周辺の空域を防空識別圏に設定しており、艦艇からレーダーを発して自衛隊や米軍の動きを監視している。この日は中国軍の戦闘機が緊急発進(スクランブル)してきたため、航空自衛隊も戦闘機をスクランブルさせた。
岸氏は3月に出演したテレビ番組で、尖閣防衛を想定した日米共同訓練を実施する考えを明らかにしている。もっとも、日本政府はこれまで、米軍が行ったような訓練は中国を刺激し事態をエスカレートさせかねないとして慎重姿勢を崩しておらず、ある政府関係者は「日米で行うべきだ」と話した。
筆者:大橋拓史(産経新聞)