Kazuko Miyamoto Solo Exhibition (2)

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ジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリーは、1971年以来、日本の芸術と文化を世界的に向けて発信し続けている米国でも有数の施設です。画期的な展覧会や関連プログラムを通じて、世界の芸術遺産といえる日本文化に対する幅広い理解と評価を深め、古典から現代までの多様性に富む日本の芸術を紹介しています。

 

JSギャラリーはこれまでも、日本の芸術を紹介するだけでなく、代表的なアーティスト、特に女性アーティストのキャリアの、初期の重要な段階から支援してきました。本展「宮本和子:挑む線」は、このJSの歴史的な流れをくむ展覧会の一つとして加わることになります。

 

また、JSギャラリーは、フェローシップ、助成金、インスタレーション・プログラムを通じて、棟方志功氏(1959年)、草間彌生氏(1965-66年)、久保田成子氏(1978年)、篠原有司男氏(1982年)、森山大道氏(1999年)、オノ・ヨーコ氏(2000年)など、多くのアーティストにとっての革新的な場や機会を提供してきました。

 

「宮本和子:挑む線」は、この歴史を踏まえ、2022年以降のJSでの展覧会、関連プログラムへ繋げる展覧会となります。本展は、宮本和子というアーティストの視点、その重要な表現に焦点を当てることで、世界におけるモダニズムの歴史を強調するものです。

 

 

挑む線

 

宮本和子(1942年東京生まれ)は、1960年代の初期のペインティングとドローイング、1970年代の画期的な糸を使った作品、そして1987年から2000年代にかけての「kimono」シリーズを通じて、ミニマリズム運動への重要な貢献をしました。本展は、これまで展示されることのなかった主要な作品を集め、より多くの人に宮本氏の豊かな作品を初めて見てもらう重要な機会となっています。

 

宮本氏は、常に独立した精神を持ち、既成概念にとらわれず、独自の道を歩んできたアーティストといえます。また、50年以上にわたり、幅広い視野により制作された絵画、ドローイング、彫刻、写真、パフォーマンス、インスタレーション、テキスタイルなどの表現法で幾何学と有機の間で揺れ動く作品を発表しています。同氏は、長年のキャリアを通して、手作業の在り方、そして釘、紐、傘、木の枝、茶色の紙袋、新聞紙など、質素でなじみのある素材の使用など、変わることのない美的感覚を保ち続けています。

 

本展では、作品の実験的制作の決定的な瞬間に焦点を当て、1960年代以降の世界における芸術的レガシーに挑戦し、その幅を広げた自身のコンセプトの複雑さと視野の広さをたどります。

 

Installation view of Kazuko Miyamoto: To perform a line, 2022© Naho Kubota. Courtesy of Japan Society

 

幾何学模様を織る

 

宮本氏は1972年から1979年にかけて制作した糸を使った革新的な作品において、抽象概念、建築、スケールのパラメーターに挑戦しています。宮本氏は当初、マンハッタンのローワーイーストサイドにある自身のスタジオで、数本の糸を壁に釘で固定し、画期的な糸を使った作品を制作していました。その作品は次第に空間的、立体的になっていきました。それらの作品は直感的で身振りのあるプロセスによって作られ、作品創作空間とアーティストの関係から生まれるものでした。ミニマリズムの厳格な幾何学と機械的な反復を弱め、代わりに人間的な要素を導入することによってエラー、偶然性、儚さの可能性を引き出しています。

 

本展のエキシビション・デザイナーであるレオン・ランスマイヤー氏は、宮本氏がこのシリーズを初めて制作した当時の前衛的な環境と工業的なスタジオの雰囲気からヒントを得、1970年代に初めて設置されて以来、展示されていなかった歴史的な糸を使った作品を再現するなどして、この展示会場をデザインしました。

 

ランスマイヤー氏とそのチームは、床や壁に直接釘を打つという作品の本来の意図と整合性を保ちながら、糸状の作品を展示するために大きな硬材でできた台を設置しました。このように慎重に考慮されたデザインにより、宮本氏の作品たちとJSギャラリーの展覧会場が調和を保っているのです。

 

Sail(1979)」 ©Kazuko Miyamoto. Courtesy of the artist; EXILE, Vienna; Take Ninagawa, Tokyo   Installation view of Kazuko Miyamoto: To perform a line, 2022© Naho Kubota. Courtesy of Japan Society

 

ミニマリズムへの共鳴と破壊

 

宮本氏の糸を使った作品や初期の絵画やドローイングは、幾何学、工業材料、連続性、モノクロームの色彩といったミニマリズムの表現形式の中で制作されていますが、その手段や機械化された作品の厳しい経済性を覆すものです。その代わりに、同氏の作品はより自由なアプローチを特徴とし、ますますストーリー性を持ち、個人的なものとなり、しばしば自伝的なものとなっています。1980年代後半には、ダンスの儀式とパフォーマンスが活動の大部分を占めるようになり、独特な視覚的言語をさらに高めることになったのです。宮本氏の独特な芸術的アプローチは、手作り感や微妙に不規則な要素を取り入れることで、反復、幾何学、グリッドといったミニマリストの形式や戦略を再構築しています。

 

Installation view of Kazuko Miyamoto: To perform a line, 2022© Naho Kubota. Courtesy of Japan Society

 

レディメイドの活性化

 

1980年以来、宮本氏は拾った素材や工芸品に自身の世界を形成してきた自伝的・歴史的瞬間を吹き込んできました。「kimono」シリーズ(1987-2000年代)は特にそれが顕著で、アーカイブの痕跡の中にある意味合いと個人のアイデンティティーのしなやかさを探求しています。着物は、自身の歴史と文化的アイデンティティーの側面を表現するために重要かつ繰り返し使用されるモチーフでした。宮本氏は幼い頃から日本舞踊を学び、着物を着ていました。また、幼少期には東京で着物の仕立てと縫製を学びました。

 

展示空間は、着物の彫刻的な特質を強調するように設計されています。ランスマイヤー氏は「kimono」シリーズを工業的金属の柱で支え吊り下げ、並置するというエレガントな展示方法をデザインしました。また、着物だけでなく、関連する紙作品や、絵画やドローイングも展示され、宮本氏の作品の形式的諸要素を反映する空間となっています。

 

筆者:ティファニー・ランバート(ジャパン・ソサエティーギャラリー部キュレーター)

 

《開催概要》
「宮本和子:挑む線」Kazuko Miyamoto:To perform a line
【会期】2022年4月29日(金)~2022年7月10日(日)
【会場】ジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリー
333 East 47 th Street (Between first and Second Avenues) New York, NY 10017

【公式HP】 https://www.japansociety.org/arts-and-culture/exhibitions/kazuko-miyamoto-to-perform-a-line-jp

【3Dバーチャルツアー】https://my.matterport.com/show/?m=oD9dKy6CQW6

【公式SNSアカウント】
Instagram: https://www.instagram.com/japansociety/ and #japansociety
Twitter: https://twitter.com/js_desu
Facebook: https://www.facebook.com/japansociety

 

 

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