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スタジオジブリが日本テレビの子会社になることを発表した9月21日の記者会見。午後3時からの会見には、スタジオジブリの鈴木敏夫社長と日本テレビの杉山美邦会長のほか、新経営体制後にスタジオジブリの代表取締役社長に就任する福田博之氏(日本テレビ取締役専務執行役員)、副社長に就任する中島清文氏が出席した。記者会見での主な質疑応答は以下の通り。
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--日本テレビの配信サービス「Hulu(フールー)」で、ジブリの人気作品を配信するということを考えているか
福田「今のところ、現状と何も変わらない。何かあったら、これから考えたいと思う」
--今回の動きを宮崎駿監督はどう考えているのか
鈴木「宮崎と作った会社なので、僕は宮崎の長男である吾朗君に継いでもらいたいと思っていたが、実は最後まで宮崎はそれに反対した。宮崎という名前のもとにジブリを支配するのは違うと。もっと広い目でいろいろやっていった方がいい、という理由だった。今朝、改めて今日のことを説明したが、納得していた。吾朗が継ぐことに関して『俺はやっぱり反対だ』と言っていた」
--今後のジブリのアニメ制作について、どのようなイメージか。鈴木さんはプロデューサーを続けられるのか
鈴木「経営はやってもらうとして、一方でどういう体制で作品を作っていくかというのが問題だった。僕も現場でいろいろやってみたけれど、ことごとく失敗に終わってね。宮崎に続く有望な監督を見つける、育成するという、その困難さを知った。ただ一つだけ言い訳をさせてもらうと、『君たちはどう生きるか』という映画を作ったが、僕は自分がプロデューサーであると同時に、ちょっと客観的にあの作品を見ると、『これ大変だな』と思った。何が大変かというとね、要するに、同じものを要求されたら、今の若い人たちは作れない。宮崎さんはこれをもって引退だと言っていたけれど、興行成績をものすごく気にしている。これが、かつてないくらいなんです。『もし、支持してくれる人がいるなら、企画までは考えてもいいかな』と、非常に謙虚に、宮崎はそう言っている」
--ジブリは過去作品の版権管理会社ではなく、制作会社としてやっていく、その上で出資されるということでいいか
杉山「はい。ジブリさんの持っているコンセプトを今後さらに発展させていきたいと同時に、宮崎さんはまだまだ意欲があるということなので、両面から考えたということです」
--日本テレビはマッドハウス、タツノコプロとアニメーション制作会社を傘下に入れているが、今回のジブリはどういう戦略で株式を出資したのか
杉山「うちは2つありますけれど、なかなか伸び悩んでいる。ジブリさんは、ジブリさんのいろんなコンテンツは世界に通用する、われわれが抱えているアニメ会社とは全く違う次元だ。そういう会社の経営に関与して、最大限応援していきたいと思う」
--「君たちはどう生きるか」はとてもぜいたくな作品。今回の子会社化というのはカネの問題もあるのか
鈴木「ちゃんと採算取れた。おかげさまでずいぶん上の方。だから7年かけて頑張ってやっても、それをちゃんと回収できる方法があるんだということを証明できたと思う」
--ジブリは、これまで鈴木さんと宮崎さんが、ある意味で好きに作ってきたと思うが、日本テレビは今後、企業として内容面である程度の対応をするのか
杉山「今のジブリのアニメ制作を最大限尊重していきたい。われわれはテレビが中心で、アニメは会社はあるけれど、世界に通用するブランドのノウハウはない。ただ経営面では、(今回の契約にあたり)ちゃんともうかっているのを確認したし、海外マーケットにもジブリ作品は非常に人気があるので、われわれにとって最大限プラスになる要素だった」
--これからも鈴木さんが決めていくのか
鈴木「だから老害になってしまうって…」
--制作部門を10年前に一応解散して、その後にアニメーターを集めて、「君たちはどう生きるか」を作ったということになると思うが、いわゆる社員として雇用して継続的にアニメを作っていく体制をもう一度作り直すというイメージでいいのか
鈴木「そういう考えに至るまでに、ずいぶん時間がかかった。人材を育てるのも一つの才能だと思う。だから、若干開き直りに聞こえるかもしれないが、そういう人材の育て方、僕と宮崎はちょっと下手。それは正直に申し上げます。だからそういうことで言うと、誰か、別の人が来て、それによって先へ行くっていう、ありようはあると思っている」
--鈴木さんには福田新社長に現場にどんどん介入していってほしいのか
鈴木「それはご本人の考えだから。頑張ってもらいましょう」
福田「間違っても、ジブリファンの皆さま、それからアニメファンの皆さまを、がっかりさせるようなことはしない。これはお約束する」
--宮崎監督は次回作の企画を考えているのか
鈴木「本当はあるけれど、内緒。宮崎はとにかく引退宣言を繰り返してきたから、またかって言われたら困っちゃうんだけど、やっぱり死ぬまでね、企画だけじゃないですよ、本当に自分が作りたいんですよ。命のある限り」