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ウクライナのゼレンスキー大統領が、ロシアのプーチン政権に奪取されたクリミア半島の奪還を訴える初めての国際会議を今夏、自国で開催する意向を明らかにした。
同半島が一方的に併合されて3月18日で丸7年たったが、ますます強権化するプーチン政権下で、併合は既成事実化の様相もみせている。
米欧日の対露制裁は続いてはいるが、主要各国首脳は奪還へのより強い共闘と支援の意思を示すため、同大統領の呼び掛けに応じて積極的に会議に参加し、ロシアの非道糾弾で結束すべきだ。
ゼレンスキー大統領は併合後にウクライナ東部で始まった政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘の停止を優先してきたが、昨年7月の和平協定も実効性は薄い。そんな中、対露強硬姿勢をみせるバイデン米政権の後ろ盾や幅広い国際支援に期待し、正面から奪還を目指す戦略に転換したとみられる。
同大統領は3月16日、ツイッターに「クリミア・プラットフォーム」と名付けた「クリミアの脱占領と再統合に向けた新国家戦略」を提唱し、これに賛同する首脳の会議を「ウクライナ国旗の日」である祝日の8月23日に首都キエフで開く計画を発表した。
招請を受けたバイデン米大統領は2月末の声明で、「米国はロシアの侵略的な行動に対し、ウクライナと共に闘う」と誓約した。同時に、米国防総省はウクライナに対し、武器供与や軍事訓練援助などで1億2500万ドルを拠出する方針を明らかにした。先進7カ国(G7)外相も今月18日の共同声明で「(ロシアは)ウクライナの主権と領土の一体性、独立性を侵害し続けている」と非難し、制裁継続を確認した。
日本には3月16日、ウクライナのタラン国防相が同国の国防相として初めて来日した。岸信夫防衛相との会談では、クリミア併合、中国の東・南シナ海への国際法無視の進出を念頭に、「現状変更への反対」で一致した。北方四島返還問題を棚上げした「領土抜き平和条約締結」というプーチン政権の無礼な策謀に直面する日本は、政府首脳がキエフ会議に出て強固な連帯を表明すべきだ。対露外交ではもはや何の遠慮も要らない。
北方領土強奪もクリミア併合も歴史の正義に背く同じ国家犯罪だ。日本には国際舞台でこの事実を広く知らしめる責務がある。
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2021年3月24日付産経新聞【主張】を転載しています