202202 Ukraine Crisis Japan G7 002

Prime Minister Kishida at the video conference of G7 leaders over the Russian invasion of Ukraine (February 24, 2022, in the Prime Minister's Office) Photo: courtesy of Cabinet Public Relations Office.

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東西冷戦終結後の世界秩序を破壊する歴史的な暴挙である。ロシアのプーチン大統領は、隣国ウクライナに対する軍事攻撃に踏み切った。1991年12月のソ連崩壊によって独立した、れっきとした主権国家への明白な侵略である。断じて許すことはできない。

 

ウクライナはロシアと断交し、あくまで祖国を守り抜く姿勢を示した。非道な侵略者に抵抗するウクライナ国民に世界は連帯しなければならない。

 

日米欧をはじめとする西側の自由・民主主義陣営と、侵略国家ロシアとの対立は決定的になった。極めて強い対露制裁を速やかに発動し、プーチン政権を懲罰して軍事・政治的野望の達成を阻む必要がある。

 

24日、ロシアが2014年に併合したウクライナ南部クリミア半島の北端で、市街地を走るロシア軍の装甲車両(ロイター)

 

ウクライナとの連帯を

 

英国はプーチン氏の「金庫番」などへの金融・経済制裁を明らかにした。ドイツもロシアからの天然ガスの海底パイプライン「ノルドストリーム2」を稼働させないと表明した。

 

形だけの経済制裁を発表していた日本だが、岸田文雄首相は24日の参院予算委員会で、「さらなる措置を取るべく速やかに取り組んでいく」と語った。毅然(きぜん)として実行してほしい。

 

ロシアは21日、親露派武装勢力が支配する東部の「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」の「独立」を承認した。

 

この2地域を守ると称してロシア軍はウクライナの首都キエフやハリコフなど各地の軍施設や空港をミサイルなど精密誘導兵器で攻撃し、「防空網を制圧した」と発表した。8年前に併合したクリミア半島からも進軍している。

 

バイデン米大統領は声明で「プーチン氏は破滅的な人命の損失をもたらす戦争を選んだ。米国は同盟・友好国と結束して断固対処する。世界はロシアの責任を追及する」と表明した。ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談でも、「理不尽で不当な攻撃だ」とロシアを強く非難した。

 

プーチン政権は「ウクライナ政府に虐げられた人々を保護するためで、非軍事化による自衛が目的だ」としているが、これほどのウソは聞いたことがない。到底受け入れ難い自己正当化である。

 

侵攻前の情報戦が熾烈(しれつ)化する中でロシア側は、「東部で親露派住民がジェノサイド(集団殺害)を受けた」との根拠のない情報も流している。

 

プーチン氏は昨年7月、自らの論文で「ロシア人とウクライナ人は一つの民族であり、ロシアあってのウクライナの主権だ」と主張した。

 

侵攻前の国民向け演説でも「ウクライナはわれわれの歴史、文化、精神と不可分だ」と強調した。仮に両民族のルーツが同じであっても、力ずくで独立主権国家を攻撃し、その領土を強奪してよい理由にはならない。

 

 

時代錯誤が目にあまる

 

プーチン氏は「北大西洋条約機構(NATO)は拡大しない、との約束を西側は破った」と繰り返すが、これは虚偽にまみれたプロパガンダ(政治宣伝)だ。このような強弁を裏付ける公式文書はどこにもない。「ウクライナがNATOに加盟すればロシアは攻撃される」とも発言したが、プーチン氏の妄想にすぎないといえる。

 

「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的大惨事だ」と嘆くプーチン氏は2008年、ソ連崩壊で独立したジョージア(グルジア)の2つの親露派地域を軍事力を背景に「独立」させ、国家承認した。今回と同様の手口である。

 

プーチン氏のウクライナ侵略は、東部地域における紛争の包括的停戦を謳(うた)った2015年のミンスク合意と国連憲章、さらにウクライナがソ連時代からの核兵器を放棄してロシアに移管する見返りに領土保全や主権を保障された1994年のブダペスト覚書の全てを蹂躙(じゅうりん)した。

 

かつてソ連の衛星国だった東欧諸国やソ連構成国だったバルト三国が、ロシアの脅威から自国を守るためNATOに加盟したのは当然の選択だ。

 

ソ連時代の版図に郷愁を抱くプーチン氏は、ソ連を構成していた残りの国家をロシア勢力圏に取り込もうとしている。

 

このような帝国主義的野望に固執すればウクライナ国民はもとよりロシア国民も苦境に引きずり込むだけである。プーチン氏は直ちに兵を引くべきだ。

 

 

2022年2月25日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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