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A Chinese flag hangs near a security camera outside of a shop in Beijing on Oct. 8, 2019. (© AP Photo/Mark Schiefelbein)

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北京市で3月、50代の日本人男性が国家安全当局に拘束された。スパイ行為に関与した疑いだというが、具体的な容疑事実などは明らかにされていない。

 

事実関係を明らかにしないままの身柄拘束は、明白な人権侵害だ。反スパイ法が施行された2014年以降、中国当局に拘束された日本人は、今回を含めて少なくとも17人が確認されている。中国はそうした邦人を即時解放しなければならない。

 

林芳正外相は今週末にも訪中して秦剛外相と会談する見通しだ。中国側に拘束されている日本人の解放を強く迫るべきだ。

 

男性はアステラス製薬の現地法人幹部で、3月に駐在期間を終えて日本に帰国予定だった。帰国直前に北京市の国家安全局に拘束されたとみられる。

 

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記者会見する中国外務省の毛寧報道官=3月27日、北京(共同)

 

松野博一官房長官は会見で「早期解放を中国側に強く求めた」と述べ、男性との面会も申し入れていることを明らかにした。中国外務省の毛寧報道官は会見で、男性を拘束した理由について「中国の刑法や反スパイ法に違反した疑いがある」と語ったが、具体的な容疑内容は示さなかった。

 

この男性の中国駐在歴は20年に及び、日系進出企業で組織する「中国日本商会」の幹部も務めた経験があるという。現地事情を熟知するベテラン駐在員が突然拘束された事態に、日本企業の間で衝撃が走っている。

 

今回の事件は、中国で働く日本人ならだれもが拘束される危険があることを浮き彫りにした。中国と取引する日本企業は「チャイナリスク」への警戒をさらに強めることになり、ビジネス交流に深刻な打撃を与えるのは必至だ。

 

中国では反スパイ法施行後、日本人を含む外国人の拘束事例が相次いでいる。いずれも具体的な容疑事実は明らかにされていない。同法の最高刑は死刑で、懲役15年の判決を受けた日本人もいる。

 

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中国全人代の開幕式に臨む習近平国家主席=3月5日、北京の人民大会堂(新華社=共同)

 

中国は3月の全国人民代表大会で、反スパイ法の強化に向けた改正を決めた。従来は国家機密が主な対象とされ、改正に伴って取り締まり対象は広がるが、その範囲は曖昧だ。改正法は年内にも施行される見通しで、中国で事業活動に携わる日本人の摘発がさらに進む懸念がある。

 

日本政府は中国に滞在する日本人を保護するため、あらゆる手立てを講じるべきだ。

 

 

2023年3月30日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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