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北方四島は日本固有の領土であり、ロシアに全てを返還させる好機が必ずくる。当事者の日本がこのことを信じず、然(しか)るべき行動を示さないのはもってのほかだ。
ロシアの侵略を受けるウクライナのゼレンスキー大統領が、北方領土は日本領だと確認する大統領令に署名した。最高会議(議会)も同様の趣旨の決議を採択した。
ウクライナは2014年から南部クリミア半島を、日本は戦後一貫して北方領土をロシアに不法占拠されている。ロシアをはさむ東西で日本とウクライナが連携し、ロシアの国際法違反を厳しく正していくべきである。
ゼレンスキー政権が北方領土問題を提起したのは、ウクライナ侵略戦争の失敗により、ロシアのプーチン大統領の求心力が弱まると見越しているからだ。そのときロシアには周辺の不法占領地を維持する余裕はなくなる見通しだ。
ゼレンスキー氏は7日の声明で今回の大統領令について、「ロシアにはこれらの領土(北方領土)に対する権利がない。世界の誰もが知っている。私たちはもはや行動すべきだ」と訴えた。
議会の決議も北方領土に関する法的位置づけを明確にするよう、国連や欧州議会、欧州安保協力機構(OSCE)などの国際機関と各国の議会に求めた。
ロシアの不法占領地が解放されなければ、国際法に基づく秩序は回復されず、世界の安全も確保されない。これがゼレンスキー氏の問題意識である。妥当だ。
以前からゼレンスキー政権は、領土問題をめぐって日本と連携したいとの意思を示してきた。8月には、クリミア奪還を目指すウクライナ主催の国際会合「クリミア・プラットフォーム」の第2回会合が開かれ、約60カ国・機関の代表がオンライン参加した。
しかし、岸田文雄首相は会合で演説しながら、北方四島には一言も触れなかった。北方領土問題を世界に訴え、多くの国の支持を得る絶好の機会を逃した。こうした失態は許されない。
日本で一時期、北方領土の「2島返還」や「面積等分」が議論されたが、極めて問題だ。国際法と正義の原則に基づき、不法占拠は一切許さない姿勢が肝要だ。日本もウクライナの戦略を学び、北方領土返還の国際世論をしっかりと高めていくべきである。
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2022年10月12日付産経新聞【主張】を転載しています