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政府が外為法の省令を改正し、先端半導体製造装置の輸出規制を強化する。事実上、中国を念頭に置いた措置で、軍事転用可能な先端半導体の製造を阻む狙いがある。
米国は昨年10月、半導体や製造装置の対中輸出規制を強化している。製造装置に強みを持つ日本も、今回の措置によって足並みを揃(そろ)えることになった。
中国は軍民融合を掲げて軍拡路線を突き進んでいる。そのための兵器開発・生産に欠かせないのが先端半導体だ。中国の軍事的脅威に直面する日本が、経済安全保障の観点で製造装置の輸出に制限をかけるのは当然である。
政府には、規制効果が十分に得られるよう米国などと連携して厳格な運用に努めてもらいたい。
米国は半導体製造装置で技術力の高い日本とオランダに輸出規制強化を求めていた。これに応じてオランダは3月に規制案を発表した。今回の日本の措置はオランダに続くものだ。5月に改正省令を公布し、7月に施行する。
具体的には、輸出に際し経済産業相の許可が必要な「リスト規制」の対象として、半導体材料に回路を焼き付ける露光装置や洗浄装置など23品目を加える。
輸出先として特定国は明示されていない。ただ、制度上、審査を簡略化できる米国や台湾など42カ国・地域に含まれない中国は、輸出の個別許可を取らなくてはならなくなる。その点で、対中規制を強める実質的な意味がある。
今回の措置は先端半導体の製造装置に限られ、汎用(はんよう)品向けは含まれない。それでも対象となる10社程度の対中事業に影響が及ぶのは避けられまい。規制に伴う混乱が広がらぬよう官民の意思疎通に万全を尽くすべきはもちろんだ。
大事なことは、審査を通じて輸出先や用途を詳細に把握し、経済安保上、問題のある対中輸出を確実に阻むことだ。企業に配慮するあまり、審査が緩くなることがないよう注意を払いたい。
日本の規制強化を受けて、中国外務省の報道官は「世界の供給網の安定を破壊する行為だ」などと反発をみせている。
だが、世界の供給網を自らの覇権追求に悪用しているのは中国である。それがもたらす脅威に対処するのは政府の責務だ。今回の措置に限らず、経済安保上の貿易管理をいかに強化するかについて不断の検討が求められよう。
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2023年4月5日付産経新聞【主張】を転載しています