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台湾の蔡英文総統と米国のマッカーシー下院議長が米ロサンゼルス郊外で会談した。
1979年の米台断交後、台湾の総統が米国で下院議長と会談するのは初めてである。
蔡氏は記者団に対し、中国の軍事圧力を念頭に「民主主義が今までにない困難に直面している」という認識を示し、米台が連携を深めれば「より強くなれる」と語った。マッカーシー氏も米台関係を重視する姿勢を強調した。
正副大統領に次ぐ米国ナンバー3の下院議長が台湾トップの総統と会談し、民主主義の連帯を確認した意義は大きい。中国の威圧に屈することなく、両氏が会談を実現させたことを評価したい。
会談には民主、共和両党の米議員も同席し、蔡氏は「超党派議員の揺るぎない支援は台湾が孤立していないことを再確認させてくれる」と述べた。
その通りである。台湾は孤立していないし、孤立させてはならない。台湾の民主主義を守るため、西側諸国は結束すべきだ。岸田文雄政権にも安全保障を含む日台間の協力強化を図ってほしい。
蔡氏とマッカーシー氏の会談を受けて、中国が台湾海峡の緊張を高める事態が懸念されている。会談前、中国が空母「山東」を台湾の南東海域に展開させたのも威嚇の狙いからだろう。昨年8月に当時のペロシ米下院議長が訪台した際には、台湾周辺で大規模軍事演習を行っている。
だが、これまでの中国の軍事的な脅しが何をもたらしたのか。
米国では台湾支援の動きが超党派で加速した。中国の覇権的な海洋進出に直面するフィリピンのマルコス政権は、国内で米軍の駐留拠点を拡大するなど対米軍事協力の強化に動いている。日本も中国の軍事的脅威の高まりを背景に沖縄県の石垣島に自衛隊駐屯地を開設した。英仏独による海軍派遣など、欧州主要国がインド太平洋に進出する契機となったのも、中国の軍拡路線である。
ロシアがウクライナを侵略したことが北欧諸国を北大西洋条約機構(NATO)加盟へと駆り立てたのと同様、中国の軍事的な圧力は台湾を巡る西側諸国の結束を固めただけではなかったか。
習近平政権は、国際社会がみせる厳しい対中姿勢を見誤ってはならない。現実を正しく認識し、軍事的威嚇をやめるべきである。
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2023年4月7日付産経新聞【主張】を転載しています