北海道の自衛隊レーダー施設近くで
中国系資本が関連するとみられる企業による
土地買収が確認されている
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自衛隊基地の周辺や国境離島など安全保障上重要な土地の利用を規制する土地利用規制法が全面施行された。政府は国と国民を守るため、法律を積極的に活用しなければならない。
規制法は、自衛隊基地や原子力発電所など安保上重要な施設の周辺約1キロを「注視区域」、自衛隊の司令部など、より重要度の高い施設周辺を「特別注視区域」に指定し、土地・建物の所有者や国籍、利用状況を調査できるという内容だ。
日本を取り巻く安保環境は厳しさを増している。中国など外国資本による土地・建物の買収が相次いでいることを踏まえれば、監視を強化するのは当然といえる。
指定した施設について、機能を妨害する行為が認められれば、中止勧告・命令が可能となる。
命令に従わない場合の刑事罰も規定している。政府は妨害行為の例として、自衛隊機の離着陸やレーダー運用の妨げとなる工作物の設置、施設の機能に支障を来すレーザー光の照射、妨害電波の発射などを挙げた。
年内にも対象区域の第1弾を指定し、数年かけて600カ所以上を指定する方針だ。早期に指定を進めてもらいたい。
ただ、規制内容は不十分であり、法律の更なる充実が欠かせない。特別注視区域では一定面積以上の取引に関し、売買当事者に事前の届け出を義務付けているが、「売買」までは規制していない。定めているのは、あくまで「利用」の規制にとどまっている。
松野博一官房長官は現下の国際情勢を念頭に、「防衛関係施設や国境離島などの機能を阻害する行為が行われるリスクが高まっている」と語っている。リスクの高まりを認識しているのであれば売買の規制も可能にし、実効性を高めるべきである。妨害行為が起きるまで対処できないのは問題だ。
米国では、外国資本が軍事施設周辺の不動産を購入する場合は審査対象となり、大統領に取引停止権限が与えられている。
規制法をめぐっては、一部野党から住民監視や私権制限に対する懸念が出されているが、法律にのっとった売買や利用は制限されない。区域の指定や土地利用の中止勧告の際には審議会の意見を聞くことになっている。規制が骨抜きにされ、国民の安全が脅かされることがあってはならない。
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2022年10月10日付産経新聞【主張】を転載しています