Robots From Around the World Come to Tokyo for JPY100-Million Prize

 

軍事転用可能な先端技術が海外に流出しないよう管理を徹底すべきは当然である。ところが、多くの大学で、その取り組みが遅れていることが文部科学省の調査で明らかになった。

 

公私立大学のうち約4割は、経済産業省が平成29年に定めた指針を守らず、輸出規制の対象となる技術を管理するための部署や責任者を置いていないという。

 

大学の危機意識の薄さを懸念せざるを得ない。「軍民融合」を掲げる中国などで日本の技術が悪用されることが、どれほど憂慮すべきなのか分かっているのか。

 

日本学術会議は29年、科学者は軍事的研究を行わないとの声明を出した。一方で多くの大学が、軍事転用可能な技術の流出阻止に必要な手立てを講じていないのである。大学関係者はなすべきことの方向性を見誤ってはならない。すべての大学で早急に効果的な流出防止策を講じるべきである。

 

公私立大学では、技術流出に関連する規定を策定したところも約5割しかなかった。これに対して国立大学では、この1年で担当部署や関連規定を設けていない大学がゼロになったという。

 

もちろん、部署や規定を整えても、それが有効に機能しているかどうかは別問題である。国立大学も含めて、対策の実効性を検証する作業を併せて求めたい。

 

大学には、国際的に輸出が規制されている製品や部材の技術だけでなく、現時点で規制対象になっていない研究段階の人工知能(AI)やロボット工学、量子コンピューターなどの技術もある。これらも含めて外国人の留学生や教職員の技術持ち出しや、海外からの研究資金提供などの報告を義務付け、軍事目的の有無などをチェックする態勢を築くべきだ。

 

警戒すべきは中国だ。中国は軍事覇権を追求するため先端技術の獲得を急いでおり、他国からの技術窃取も厭(いと)わない。海外研究者を破格の条件で雇う「千人計画」などもある。なりふり構わぬ手法への警戒感は、中国とのハイテク摩擦が激化する米国はもちろん、欧州各国でも強まっている。

 

懸念するのは、欧米で対中規制が強まる中で、日本の大学が技術流出の抜け穴になることだ。その結果、米欧が日本の大学との共同研究を避ける事態もあり得る。それがいかに国益を損なうかをもっと厳しく認識すべきである。

 

 

2020年10月16日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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