中国軍が8月26日、中国本土から南シナ海に向けて弾道ミサイル4発を発射した。米国防当局者によると西沙諸島と海南島の間の海域に着弾した。
香港紙によれば、うち2発は、グアムの米軍基地を核攻撃できる中距離弾道ミサイル「東風(DF)26」で、残り2発は、「空母キラー」と呼ばれる準中距離の対艦弾道ミサイル「東風21D」だったという。「東風26」は対艦弾道ミサイルとしても運用できる。
中国軍は昨年も南シナ海へ弾道ミサイルを発射した。中国近海や、軍事拠点化した人工島のある南シナ海に米軍が入り込めば、いつでも空母やグアムを攻撃できると脅したいのだろう。
日本列島越えの弾道ミサイルを発射し、グアム方面へのミサイル発射をちらつかせた北朝鮮と同様の乱暴な振る舞いといえる。習近平政権は、無益な軍事挑発を繰り返してはならない。
中国は根拠のない「九段線」というラインを引いて、南シナ海の大半に自国の主権が及ぶと強弁している。ハーグの仲裁裁判所が裁定したように国際法を踏みにじるもので、なんら正当性はない。
ベトナムは26日、中国が南シナ海で行っている軍事演習の中止を要求した。
米国は同日、人工島造成や軍事拠点化に関わった中国企業に初の制裁を科した。ポンペオ米国務長官は「米国は中国が南シナ海での威圧的行動を打ち切るまで行動し続ける」と強調した。
菅義偉官房長官は27日の会見で中国によるミサイル発射の報道に関連して「最近の中国の活動は懸念を持って注視している。南シナ海の緊張を高めるいかなる行為にも強く反対する」と述べ、「自由で開かれた平和な海を守るため、米国をはじめ国際社会と連携していく」と表明した。
エスパー米国防長官は26日、ハワイで演説し、中国の軍事力強化が進めば「南シナ海、東シナ海での挑発的行動が強まることは疑いようがない」と述べ、各国に対中包囲網構築を呼びかけた。
河野太郎防衛相とエスパー長官は、29日にグアムで会談する予定だ。南シナ海は日本にとっても極めて重要な海上交通路(シーレーン)であり、東シナ海とも直結する。中国の覇権を阻むため日米の安全保障協力の具体的強化を話し合ってもらいたい。
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2020年8月28日付産経新聞【主張】を転載しています