韓国政府が、慰安婦問題の日韓合意に基づき設立された財団の解散を発表した。合意を踏みにじる行為である。
安倍晋三首相が「国際約束が守られないのであれば、国と国の関係が成り立たなくなってしまう」と批判したのはもっともである。国際社会で文在寅政権の信用は失われよう。
元慰安婦を支援する財団は、合意に基づき、日本政府が拠出した10億円を財源に韓国政府が設立した。元慰安婦の7割以上が財団による現金支給事業を受け入れている。合意の骨格を成す財団の一方的な解散は背信行為に等しい。
外務省は、韓国の駐日大使を呼んで抗議した。大使は「日韓合意の破棄や再交渉を求めることはない」と述べた。だが文政権は、合意を壊したくて約束破りを重ねているようにしかみえない。
日韓合意は、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を明言した。「互いに非難、批判することは控える」ことも約束した。
文大統領は「未来志向の日韓関係を構築する」と繰り返すが、一方で両国関係の基盤を壊す言動を続けている。
今年から8月14日を「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」(慰安婦記念日)とし、「日本軍慰安婦問題研究所」も発足させた。
日本政府はもっと強く抗議すべきだ。事実による明確な抗議を怠れば、「強制連行」「性奴隷」などと歴史をねじ曲げる反日宣伝が横行するだけである。
ソウルの日本大使館前の慰安婦像は反日運動の象徴である。外国公館の安寧、尊厳を守る国際法を無視するものだ。日韓合意の際、その撤去に努力するとした約束も果たされていない。釜山の総領事館前の慰安婦像を含め、即時撤去を厳しく求めるべきだ。
韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた「徴用工」訴訟の問題も、国家間の約束を無視し、戦後築いてきた日韓関係を崩すものだ。判決を下した最高裁の長官を抜擢(ばってき)したのは文氏である。司法への責任転嫁は通らない。
日韓合意は、北朝鮮情勢など東アジアの安全保障上の懸念が強まる中で、両国関係の改善を目指して交わされた。だがこうした事態が続いては、正常な付き合いを続けられなくなる。
文氏は現実を直視し、何が国益か、よく考えたほうがいい。