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北朝鮮による拉致被害者、蓮池薫さんら5人が帰国を果たしたのは、平成14年10月15日である。あれから21年となった。
だが、横田めぐみさんらについて北朝鮮側は一方的に「死亡」と伝えたまま、被害者全員の即時帰国を求める家族の必死の訴えに応えず、拉致問題解決への交渉は進んでいない。拉致は今も、進行中の事件である。
10月15日、鳥取県米子市で開かれた集会で蓮池さんは「帰国を待つ存命の親が子供と再会できなければ、解決ではないという覚悟が必要」と訴えた。
めぐみさんの母、早紀江さんは87歳、有本恵子さんの父、明弘さんは95歳である。政府認定の拉致被害者の健在な親は、2人だけになってしまった。解決へ、時間の猶予はない。
蓮池さんはまた、解決に向けては「広く国民世論を高め、特に若い世代、幼い世代に伝わっていることを北朝鮮に示す必要がある」とも述べた。
蓮池さんらが羽田空港で特別機からタラップを下りる、あの衝撃的な映像に記憶がない世代が増えている。ただ、そうした世代も意識は高い。
産経新聞は各地の小中学校を対象に拉致問題の担当記者による「出前授業」を行っている。多くの授業で、質問が途切れることはない。
例えば「北朝鮮はめぐみさんらを『死亡した』と言っているのに、なぜ日本は『帰せ』と言い続けるのか」といった質問には、北朝鮮が伝えた「死亡日時」後のめぐみさんの生活情報が明らかになり、送り付けられた「遺骨」が別人のものと鑑定されたことなどを紹介する。
認識を新たにした生徒児童から必ず聞かれる質問がある。
「僕(私)たちにできることはなんですか」
こう答える。家族や友人らと拉致問題の話をたくさんすること。被害者とその家族らに思いをはせ、早く助けたい、と思うこと。それを口に出すこと。
蓮池さんも先の集会で、この問いに答えている。「こうして集会に参加していただき、署名をしていただく。それが電波に乗って北朝鮮に伝わる」
日本政府を動かし、北朝鮮に「拉致問題の解決なしに未来を描くことはできない」と理解させるには、国民全ての怒りを集結させることが欠かせない。
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2023年10月20日付産経新聞【主張】を転載しています