世界を舞台に、「日の丸連合」で反転攻勢をかけてもらいたい。NTTとNECが6月25日、第5世代(5G)移動通信システムなどの技術開発で資本・業務提携した件である。
5Gは自動運転や遠隔医療、スマート工場などの最先端技術に欠かせない基幹的な通信インフラだ。ハイテク覇権をめぐる米中対立の最前線でもある。
ところが、日本企業は世界から取り残されている。世界の基地局シェアは、中国の華為技術(ファーウェイ)と北欧2社で8割を占め、NECと富士通はともに1%に満たない。
通信機器を通じて中国に機密情報が奪われているとみる米国の要請で世界的にファーウェイ排除が模索される今は、日本企業の好機ともいえる。国産技術の確立は経済安全保障にも資する。だからこそ、企業連携はもちろん、政府も積極的に支援すべきである。
NTTがNECに約640億円を出資する。両社は光・無線技術などの知見を持ち寄り、基地局で使われる通信機器を開発する。2030年代に本格化する次世代規格「6G」も視野に、基地局で2割のシェア獲得を目指す。
両社は他企業の優れた機器も組み合わせて基地局を造る「オープン化」を掲げる。開発の遅れを挽回するため、幅広い企業連合で国際競争力を高める戦略だろう。
米国にかぎらず、安全保障の観点でファーウェイからの調達を警戒する国は少なくない。今春、5Gサービスが始まった日本でも同社の5G基地局を採用している通信会社はない。ただ、ファーウェイは安価で高品質とされる。日本企業がこれに対抗できるようになれば、欧米などに有力な選択肢を提供することにつながろう。
無論、海外に水をあけられた5Gで、いきなり先頭集団に入るのは難しい。問われるのは、5Gで出遅れた教訓を生かして6G時代のトップに立てるかである。
経済産業省は、10年ほど続くとされる5G時代の後半戦を念頭にNECや富士通などの開発を支援する。700億円規模になる見通しだ。総務省も6Gの推進戦略をまとめ、国を挙げて後押しする方針を示した。縦割りを排し、効果的な政策を継続的に講じなくてはならない。デジタル時代に即した社会・経済改革は安倍晋三政権の重要な課題だ。5Gや6Gはその根幹をなす意義を持っている。
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2020年7月7日付産経新聞【主張】を転載しています